日本キリスト教協議会(NCCJ)と韓国キリスト教教会協議会(NCCK)は、福島第1原発の敷地内にたまる処理済み汚染水の処分方法について、基準値以下の濃度に薄めた上で海洋放出することを日本政府が決定したことについて、撤回を求める共同声明(日本語・韓国語)を発表した。
声明は海洋放出について、「人間と自然のいのちの本来の姿を歪め、人類全体を緩慢な死に追いやる明白な犯罪的行為罪であることは明らか」と批判。濃度を薄めた場合も放出される放射性物質の総量に変化はないとし、今後予定されている青森県の六ヶ所村再処理工場からの海洋放出を見据えた決定である可能性などを指摘している。また、他国の原発でも放射性物質「トリチウム」を含む水が放出されていることについては、「福島で予定される排水は悲惨な事故を起こした原発の処理水であり、同列に扱うことは間違い」と主張している。
一方、韓国でも状況は同様だとし、日本海に面した月城(ウォルソン)原発では、使用済核燃料の貯蔵水槽が飽和状態となり、住民らの反対にもかかわらず、乾式貯蔵施設の増設が強行されようとしていると批判。さらに、同原発敷地内の地下水からトリチウムが大量に検出された問題も、原因や周辺環境に及ぼす影響がまったく明らかになっていないと問題視した。慶州(キョンジュ)放射性廃棄物処理場では、汚染地下水が海洋に放出され続けているとし、「韓国の原発も同様に放射性物質放出の責任を免れることができません」としている。
声明は日韓両政府と世界市民への要望を述べた上で、最後には「日韓両国の教会は、世界教会および全世界の市民と連帯しつつ、核と放射能の汚染から安全な地球を守るために全力を尽くさなければなりません」と訴えている。
NCCJはこれに先立ち、日本政府が4月13日に海洋放出を決めた2日後の同15日、独自の抗議声明を発表している。また、日韓のカトリック正義と平和協議会なども2月、政府が正式決定する前に、海洋放出に反対する共同声明を発表している。