リック・ウォレン牧師が牧会する米国の著名なメガチャーチ「サドルバック教会」(カリフォルニア州)で3人の女性が按手(あんしゅ)礼を受け牧師となったことについて、同教会が加盟する米最大のプロテスタント教団「南部バプテスト連盟」(SBC)の教義に反するとして、南部バプテスト神学校(SBTS、ケンタッキー州)のアルバート・モーラー学長がSBCに対し教義の再確認を求めた。
モーラー氏は10日、自身のウェブサイトに女性牧師や女性説教者に関する論説(英語)を掲載。その中で「先週、サドルバック教会で3人の女性が按手礼を受け牧師となりました。同教会はこれを自らの歴史における『歴史的』な事柄とし、『サドルバック教会のリック・ウォレン牧師らが、教会初の女性牧師3人のために祈る』という一文と共に按手礼の写真を掲載しました」と述べた。
モーラー氏は、伝統的に男性のものとされてきた職に「疑いの余地なく」女性が進出したと指摘。今回、SBC最大の教会とされるサドルバック教会で初の女性牧師の一人に任命されたシンシア・ペティーさんのインタビュー(英語)を引用し、次のように述べた。
「この3人の女性が、牧師として奉仕し教職に就くと考えられていることは間違いありません。SBCは、『バプテスト・フェイス&メッセージ』(BF&M、英語)を通して、これ(女性牧師)が聖書に反していることを明らかにしています。これらの動きはもはや対立や議論といったものではなく、SBCの信仰と協働の確かな基盤を再定義し、再構築しようとする試みです。神学上の問題は2000年にSBCが『BF&M』の中で明確かつ正確に語ったときから変わっておらず、さらに言えば、聖書は今までもこれからも変わりはしません」
SBCの次期議長候補の一人とされるモーラー氏は、SBC内におけるサドルバック教会のような加盟教会の増加が、女性を説教者や牧師にしてきたと主張。SBCはすべての加盟教会のために、教団への加入基準を明確にする必要があるとして、次のように述べた。
「かなり大規模で有名なものをも含む幾つかの教会において、われわれの信仰告白に反して女性が牧師になったことが明らかになっており、その数は増加しています。さらに、SBCに名を連ねているにもかかわらず、多くの教会において、女性による朝の礼拝説教が歓迎され、また宣伝されています。SBCは、その神学的信念と協働の基盤について不明確にしていてはなりません。そのような余裕はありませんし、また問題を無視してもいけません。すぐにでも教義を再定義するかどうかを決めることになるでしょうが、私はSBCがこのような暴挙を許し、真実から後退するとは信じていません」
クリスチャンポストは10日、サドルバック教会に対し、今後もSBCに加盟し続ける方針かを問い合わせたが、回答はすぐには得られなかった。
モーラー氏は論説の中で、女性説教者を任命しようとする動きは新しいものではないとし、この問題は1970年代から保守派が復権し「決定的に問題を明確にする」まで、SBC内をかき乱してきたと語った。
「SBCの加盟教会の牧師に、女性が一握り以上いた時代はありませんでした。しかし、プロテスタントの主流派教団は、第二波フェミニズムによる要求と、解放の神学による衝動という2つの大きなエネルギーに突き動かされて、女性牧師や女性司祭の任命にまい進したのです。どちらの場合も聖書が主な障害となりましたが、これら主流派教団の信条は自由主義神学によってすでに妥協的なものとなっていたため、聖書に基づいた議論は除かれ修正主義的な議論が展開されました。この聖書を転覆させる方策もまた、具体的に2つの形を取りました。キリスト教徒が聖書を2千年近く誤って読んできたとするか、あるいは、聖書は家父長制と抑圧に絶望的に陥っており、聖書の著者はまったく間違えていたとするか、のどちらかの主張が提示されたのです」
モーラー氏は、自由主義神学を採用した教団には「自由主義的なプロテスタント教義の女性化」がもたらされ、それは彼らにとって「死の接吻(せっぷん)」のようなものだったと主張した。
「率直に言って、(自由主義神学を採用した教団には)男性はそれほど多く残っていません。実際に、そういった教会にはあまり人が残っていないのです。自由主義神学は、あらゆる教会や教団にとってまさに死の接吻です。彼らに残されたのは、社会正義活動と(教団の)延命的な維持だけです」
ミッドウェスタン・バプテスト神学校(MBTS、ミズーリ州)のジェイソン・キース・アレン学長も9日、サドルバック教会が女性に按手礼を授けたことについて、聖書からの「残念な」逸脱だとし、ツイッター(英語)に次のように投稿した。
「これは聖書の明確な教え、BF&M、そして長年保たれてきたSBCの総意と実践からの残念な逸脱です。1テモテ3章とテトス1章は、監督になる者の条件を挙げています。これは『提案』しているのではありません。聖書に忠実でいようではありませんか」
一方、コーナーストーン・バプテスト教会(テキサス州)のドワイト・マキシック牧師は、保守派の牧師たちが言うほど、このテーマに関して聖書は明確ではないとし、MBTSのチャールズ・スミス上級副学長のコメントに対し、ツイッター(英語)に次のように書いた。
「リック・ウォレン牧師はキリスト教界で最も売れている本を書いており、サウスウェスタン・バプテスト神学校(SWBTS)の卒業生です。また、ビリー・グラハム牧師は女性説教者を肯定しました。もしあなたが言うように聖書がこの問題に関して『明確』であるならば、グラハム牧師やウォレン牧師、そしてSWBTSで女性に説教をさせた人たちは皆、これらを決してしなかったはずです。
私が言いたいのは、サドルバック教会の牧師、グラハム牧師、あるいは昨日、著名な伝道者であるベス・ムーア氏に説教をさせたテキサス州の牧師について、SBCが間違っていると断言したことは一度もないということです。ですから、SBCが女性による説教を公式に禁じているというアレン氏やその他の人による主張は真実ではなく、不正確です」