米シカゴ在住の牧師夫妻が1日、男に殴られた上、耳の一部を噛みちぎられ、目をえぐられるという猟奇的な事件に巻き込まれた。夫妻が回復に向けて治療を受ける中、国民からは多くの支援が寄せられている。
地元のシカゴ・サン・タイムズ紙(英語)によると、現在、精神鑑定を受けているイライジャ・ルール・ヒル・プリンス被告(28)は、セーラム・バプテスト教会のティモシー・ジョンソン牧師(58)と妻のレニーさん(56)に対する残忍な犯行により、加重暴行と殺人未遂の罪に問われている。
夫妻の娘であるデスティニーさんはフェイスブックにコメント(英語)を投稿し、両親が受けた犯行をめぐって次のように語っている。
「これは夢でもなければ、映画や犯罪ドラマでもありません。私たちの人生なのです。私には言うべき言葉がありません。口を開く気力すらない時もありますが、両親の強さが私の支えになっています。私たちには皆さんの祈りが必要です。皆さんの愛が必要なのです」
同紙が検察の話として伝えたところによると、ルール・ヒル・プリンス被告は、シカゴのサウスサイドにある義母宅の裏手路地を掃除していた際、ジョンソン牧師に何かを売ろうとしたが断られたことから犯行に及んだという。
「兄は、『いや、結構。遠慮しておくよ。興味がないのでね』と言っただけです。それなのに、彼(ルール・ヒル・プリンス被告)は兄を襲ったのです」と、ジョンソン牧師の妹のロンダ・ハッチャーソンさんはCBSシカゴ(英語)に語っている。
ジョン・F・ライク・ジュニア判事は同紙に対し、ルール・ヒル・プリンス被告の嫌疑を聞いたとき、「まるでホラー映画の話のようだった」と語っている。
ルール・ヒル・プリンス被告はジョンソン牧師の首を絞め、自分が使っていたシャベルでジョンソン牧師の頭部や顔を殴り、指で目をえぐり、耳を噛みちぎり、頭頂部に噛み付いた上で、ジョンソン牧師の口の中に唾をはき捨てたとされる。そして最後には、3インチ(4センチ弱)の木片をジョンソン牧師の左目に詰めたという。
さらに、事態に気付いて駆け付けたレニーさんに対しても、目をえぐり、耳を噛みちぎった上で、地面に倒れたところを複数回蹴ったとされる。
ジョンソン牧師は目から木片を引き抜くと、やっとの思いで救急車を呼んだ。近隣住民が大声を出したため、ルール・ヒル・プリンス被告は現場から逃走したが、その後、警察に逮捕された。検察によると、口や顔、上着の肘には血液が付着していたが、ルール・ヒル・プリンス被告は「いなか者どもの血だ」などと供述しているという。
「両親は人生が変わるほどのけがを負いました。そのけがは今後ずっと、両親と私たち家族に影響を与えることになるでしょう。父はこの10年間、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫の一種)も患っています。また父と母は、それぞれの母親(私たちの祖母)の面倒も見ているのです」
デスティニーさんは、クラウドファンディングサイト「ゴーファンドミー」(英語)にこのような書き込みをしており、12日現在、2千人以上から15万7千ドル余り(約1700万円)の寄付が寄せられている。
検察によると、レニーさんは現在、両耳の一部が欠損している他、両目の周辺にあざがあり、頭と顔に打撲を負っている。ジョンソン牧師は視力障害のほか、眼球を支えている薄い骨である眼窩(がんか)骨の骨折、耳の一部欠損などのけがを負っている。
CBSシカゴの取材に、息子のアントニオさんは「2人はこの町の学生や市民のために大きな貢献をしています」と言い、デスティニーさんは「両親はとても寛大で、あふれるほど豊かな愛を持っています。それなのに、どうしてこんなことが起きたのか分かりません。まるで悪夢です」と付け加えた。