中国の迫害状況を監視する在米団体「チャイナエイド」はこのほど、中国における宗教的迫害が2020年に増大し、何千人ものキリスト教徒が教会閉鎖やその他の人権侵害の影響を受けたとする報告書を発表した。
チャイナエイドが4月22日に発表した「年次迫害報告書2020」(英語)によると、中国政府は昨年、少なくとも9つの教会を取り壊し、それによって信徒や礼拝参加者ら5千人以上が影響を受けた。中国政府はまた、あらゆる政府非公認の「家の教会」を迫害し、そのすべての主要な指導者らを召喚し、尋問したという。
習近平国家主席の指示の下、中国当局は完全に管理できる「宗教」を作り上げるため、政府公認教会と「家の教会」の両者に対し、国旗の掲揚や、愛国的な歌を礼拝で歌うよう命じた。また、牧師や司祭に対しては、説教を中国共産党のイデオロギーに合致する「中国化」した内容に変更するよう指示をした。この他、家庭集会に対する強制捜査も行われ、多くのキリスト教徒が、ホームスクーリングを行ったり、子どもたちを教会運営の学校に送ったりしたことで罪に問われ、起訴されたという。
チャイナエイドはこうした事例をまとめた上で、次のように結論付けている。
「チャイナエイドによる2020年の調査では、キリスト教徒や他の何らかの信仰を表明している人々に対する中国政府による迫害が、前年の報告件数を再び上回ったことが確認されました。隠されていた事実が明るみに出るにつれ、中国共産党の迫害による長期的な悪影響が、まるで当初は正体が分からなかった新型コロナウイルスのように現れています。それは、悪臭を放つような脅威であり、諸外国がそれに対しいかに注意を払うかが問われています」
チャイナエイドの報告書に先立ち、米国際宗教自由委員会(USCIRF)は4月、2021年の年次報告書(英語)を発表し、特に中国政府によるキリスト教徒とウイグル人イスラム教徒に対する著しい人権侵害を報告している。
USCIRFは報告書で、中国当局が昨年、宗教的少数派を監視・追跡するために、最新の監視技術の前例のない使用を継続したとし、「中国共産党は長期にわたり信教の自由を抑圧し続けてきたが、近年、宗教に対して一層敵対的になった」としている。その上で、信教の自由に対し、体系的で継続的かつ著しい違反に関与しているとして、中国を信教の自由に関して「特に懸念のある国」として指定を継続するよう米政府に勧告した。
中国の人権迫害を伝える「ビター・ウィンター」(英語)によると、中国の学校ではキリスト教が「邪悪なカルト」だと教えられ、宗教に批判的な教育が行われているという。また、家族の信仰に疑問を持ち、近親者さえも当局に密告するように促されているという。
USCIRFのゲイリー・バウアー委員は、報告書の中で次のようにコメントしている。
「中国共産党は、神を求め礼拝する権利を含む市民の基本的人権を否定しているだけではありません。世界中の発展途上国に対し、自国を新しい権威主義的な統治モデルとして提供しているのです。中国共産党は国際的な人権基準の弱体化に積極的に取り組んでおり、増大する軍事力を利用して隣人を威嚇し、脅迫しているのです」
キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」は、キリスト教に対する迫害がひどい50カ国をまとめたリストで、中国を17位にランク付けしている。
オープンドアーズのボイド・マクミラン戦略研究室長は最近、英デイリー・エクスプレス紙に対し、中国共産党は国内のキリスト教人口の増加に危機感を募らせており、その結果として宗教に対する取り締まりを強化していると語った(関連記事:中国のキリスト教人口、2030年に3億人か 共産党指導部に募る危機感)。
「中国の教会がそれほどまでに狙われていると私たちが考える根拠は、中国共産党の指導部が教会の規模や成長を恐れていることにあります。教会が1980年以降と同じ速度で成長すると仮定した場合、年間の成長率は約7~8%になります。その場合、2030年までに3億人強の集団となることが見込まれます。ご存じの通り、中国の指導部はかなり長期的な計画を立てています。彼らの経済計画は2049年まで続きます。そのためこのことは、指導部にとって悩みの種なのです。教会がそのように成長し続けた場合、彼らは将来的に権力の共有を迫られることになるからです」