東日本大震災の発生から丸10年となった11日、日本カトリック司教団はメッセージ「連帯のきずなを希望の光に」を発表した。この10年間、現地での支援活動を支えてきたボランティアや寄付者に感謝を表明するとともに、将来に対する希望の回復や脱原発、生活スタイルの見直しの必要性も語り、「互いの連帯のきずなのうちに、いのちを生きる希望の光を見いだし、共に手を取り合って歩んでまいりましょう」と呼び掛けた。
日本のカトリック教会は震災発生直後の2011年3月16日、仙台市に復興支援のためのセンターを設置。東北一帯を管轄する仙台教区を中心に、全国16の教区が力を合わせて支援活動に取り組んできた。東北沿岸地域の延ベ8カ所にボランティアセンターを設置し、全国からのボランティアを受け入れてきたほか、カトリック教会の人道支援団体「カリタスジャパン」を通し、国内外から集まった募金で支援活動を側面から支えてきた。
司教団は、教会内外・国内外から駆け付けたボランティアに「皆様の存在なしに、復興支援活動はあり得ません」と述べ、感謝を表明。教会の活動に理解を示し、協力してくれた各地の自治体や社会福祉協議会、またこれまで10年にわたる活動を支えてきた寄付者に対し、心からの謝意を伝えた。
一方、現地での活動は一時的な救援活動にとどまらず、被災者と共に歩む中で「いのちの希望」を生み出すことを目指してきたという。仙台教区は「新しい創造」をモットーに掲げ、過去に戻るのではなく、希望を持って前進を続ける道を選んできたとし、「教会の活動は、10年という節目をもって終わってしまうわけではありません」と強調した。
2019年11月に来日したローマ教皇フランシスコが被災者に伝えた言葉にも言及した。教皇は、東日本大震災で見られたさまざまな形の助けの手は、「時間がたてばなくなったり、最初の衝撃が薄れれば衰えていったりするものであってはなりません。むしろ、長く継続させなければなりません」と指摘。「一人で『復興』できる人はどこにもいません。誰も一人では再出発できません。町の復興を助ける人だけでなく、展望と希望を回復させてくれる友人や兄弟姉妹との出会いが不可欠です」と語った。司教団はこの言葉を受け、「物質的な支援にとどまらず、世界に広がる連帯のきずなの中で、『展望と希望を回復』するために、友人として、兄弟姉妹として、東北の皆さんとともに歩み続けたいと思います」と続けた。
福島第1原子力発電所の事故を受け、司教団は2011年11月、原発の即時廃止を呼び掛けるメッセージを公表するとともに、社会の在り方の見直しを提言した。しかし、時間の経過とともに、現状は当時の呼び掛けとは異なる方向に進んでいると感じるとし、震災10年の節目にあらためて原発の即時廃止と生活スタイルの見直しを呼び掛けた。
最後には、人間のいのちは「神からの賜物」であり、すべてのいのちが例外なく守られ、誰もが忘れ去られることのない社会を目指したいと表明。震災により、人間の限界や弱さを知るようになった一方、「互いに助け合うことの大切さ、いのちを守るために連帯することの大切さ、いたわりの心の大切さ」を心に刻むようになったとし、「大震災10年の今、世界はまさしくその大切さを思うことを必要としています」と伝えた。