ローマ教皇フランシスコは5日から8日までの4日間の日程で、中東のイラクを訪問する。カトリック教会のトップである教皇がイラクを訪問するのは、これが初めて。また、新型コロナウイルスの影響で1年以上海外訪問は控えており、就任以来33回目となる今回の海外司牧訪問は、2019年11月の訪日以来となる。
公営のバチカン・ニュース(日本語版)によると、教皇はバチカンでイラク難民らと言葉を交わした後、イタリア時間5日午前7時45分(日本時間午後3時45分)に、ローマのフィウミチーノ国際空港から特別機で出発した。イラクの首都バグダッドには、現地時間午後2時(日本時間同10時)ごろに到着する。
バチカンが発表した日程(英語)によると、バグダッド国際空港ではムスタファ・カディミ首相らが歓迎。その後、教皇はバグダッドの大統領宮殿を訪れ、バルハム・サリフ大統領を表敬訪問する。大統領宮殿で政府関係者や市民社会の代表者らと面会した後、バグダッド市内のカトリック教会に移動し、イラクの司教や司祭、修道士らと面会する。
6日は、バグダッドの南約160キロに位置するナジャフを訪れ、イスラム教シーア派の最高権威とされるアリー・シスタニ師を表敬訪問する。その後、バグダッドの南約360キロに位置するナーシリーヤに移動。ナーシリーヤの中心部はユーフラテス川が流れており、古代都市ウルの遺跡が近くにある。ウルは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3宗教に共通して「信仰の父」とされるアブラハムの故郷で、教皇はここでさまざまな宗教の指導者と対話する予定。その後、バグダッドに戻り、現地時間午後6時(日本時間7日午前0時)からカルデア典礼カトリック教会の聖ヨセフ大聖堂でミサを行う。
7日は、イラク北部を訪れる。初めにクルド人自治区の主都アルビルに向かい、クルド自治政府のネチルバン・バルザニ大統領やマスルール・バルザニ首相らと面会。その後、2017年まで過激派組織「イスラム国」(IS)に占拠されていたイラク第2の都市モスルまでヘリで移動し、犠牲者のための祈りをささげる。また、同じくISに占拠されていたカラコシュも訪問。カラコシュはキリスト教徒が多く住む町で、現地の教会で地域の人々との交流の時を持つ。再びアルビルに戻り、スタジアムでミサを行った後、この日のうちにバグダッドに移動する。
8日は、バグダッド国際空港で行われる送別式典に参加した後、現地時間午前9時40分(日本時間午後3時40分)に出発し、ローマへの帰途に着く。ローマ近郊のチャンピーノ空港には、イタリア時間午後1時(日本時間同9時)ごろに到着する予定。
教皇は訪問前日の4日、イラクの人々に向けたビデオメッセージを公開。バチカン・ニュース(日本語版)によると、「何年もの戦争とテロリズムの後、赦(ゆる)しと和解を主に祈り求めるため、心のなぐさめと傷の癒やしを神に願うために、私は悔悛の巡礼者として参ります」と述べ、イスラム教徒やヤジディ教徒にも「皆、すべての人は兄弟です」とあいさつの言葉を送った。
イラクの人々が経験した多くの苦しみに心を寄せるとともに、イラクが旧約聖書の舞台となった歴史性にも言及。その上で「数千年前、皆さんの地でアブラハムは歩み始めました。今は私たちが、同じ精神を持って平和の道を共に歩み続ける時です」などと呼び掛けた。