当時12歳だったキリスト教徒の少女が誘拐された後、性的暴行を受け、強制的に改宗させられた上、誘拐犯の一人と結婚させられた事件で、パキスタン東部パンジャブ州の裁判所は16日、結婚は公的に承認されたものではないとし、少女を解放するよう命じる判決を下した。
カトリック系のUCAN通信(英語)によると、同州ファイサラバードの裁判所はこの日、政府が運営するシェルター(一時避難施設)で保護されていたファラ・シャヒーンさんの解放を命じ、家族と再会することを認めた。
カトリックの信仰を持つシャヒーンさんは現在13歳。12歳だった昨年6月、パキスタン第3の都市であるファイサラバード市内で、イスラム教徒のキザール・ハヤット容疑者(45)ら男3人に誘拐された。その後、性的暴行を受け、牛小屋で約5カ月間にわたって鎖につながれ、汚物の後始末などの労働を強いられたとされている。
昨年12月に警察が救出。しかしハヤット容疑者は、シャヒーンさんが自らの意思で自身と結婚したと主張していたため、警察はその後捜査を打ち切っていた。英タイムズ紙(英語)によると、シャヒーンさんの両親は彼女が誘拐され暴行を受けたと訴えていたが、警察は両親の訴えを無視する形で捜査の打ち切りを決めたという。
UCAN通信によると、ラナ・マソード・アクハター裁判官は判決で次のように述べた。
「彼女は父親と一緒に暮らしたいと願っている。また、ファラ・シャヒーンとキザール・ハヤットの結婚は登録されておらず、そのニカー(イスラム教における結婚契約)は当該の市町村評議会によって承認されていないため、彼女を無期限にダー・ウル・アマン(シェルター)にとどめておくことはできない。申立人であるファラ・シャヒーンの父親は、彼と彼の家族が適切にファラ・シャヒーンの世話をし、他の何者かが彼女の生命と自由に害を及ぼすことを許さないと保証している」
一方、シャヒーンさんの家族を法的に支援してきた「国際使徒の福音ミニストリー」(AGMI)のイフティカー・インドリアス会長は、ハヤット容疑者の逮捕を求めた上で次のように語った。
「私たちは、侮辱と不正に対して声を上げてくれたすべてのキリスト教徒に感謝します。私たちはこの成功を、娘たちの強制改宗を止めるためのものにしなければなりません。彼女たちの安全を確保し、救助されて家に戻るこのような暴力の犠牲者たちを支援することは、親として、また保護者としての私たちの責任です」
この事件では、警察は初めシャヒーンさんの年齢を16歳か17歳くらいとしていたが、出生証明書から誘拐された当時12歳であったことが確認されている。
地元の活動家であるララ・ロビン・ダニエルさんは、シャヒーンさんが救出された昨年12月、UCAN通信(英語)に次のように語っていた。
「警察は初め、犯罪者たちと交渉の末、(シャヒーンさんを)警察署に連れてきました。彼女は足首と足を負傷しており、警察署で包帯を巻かれていました。(救出時)彼女はトラウマを抱え、受けた苦痛について話すことはできませんでした」
シャヒーンさんの両親は、彼女が強制的に改宗させられ、ハヤット容疑者と強制的に結婚させられたと訴えている。シャヒーンさんの父親は1月、英デイリー・メール紙(英語)に次のように語っていた。
「奴隷のように扱われたと言っていました。彼女は一日中働かされ、牛小屋で汚物の掃除をさせられました。24時間、鎖につながれていました」
ダニエルさんは当時、ソーシャルメディアに次のように書き、問題を訴えていた。
「彼女の結婚、強制改宗、足のけがは恐怖を物語っています。宗教的少数派の未成年の少女たちは、法整備の欠陥と不完全さのために安全ではありません。警察、司法、脆弱(ぜいじゃく)な法律は、貧しい親たちをあざ笑っています」
パキスタンのNPO団体「連帯と平和のための運動」(MSP)が2014年に行った調査によると、パキスタンで宗教的少数派となるヒンズー教とキリスト教は、それぞれのコミュニティーから毎年約千人の少女や成人女性が誘拐され、強制的にイスラム教に改宗させられた上、強制的に結婚させられていると推定されている。