東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で女性を軽視するような発言をした問題で、日本YWCAは5日、森氏に対する抗議声明を発表した。「ミソジニー(女性蔑視)と偏見に基づく差別発言であり、到底看過できるものではない」と強く抗議し、森氏の辞任を求めた。
森氏は3日のJOC臨時評議員会で、競技団体における女性理事任用に関して「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。誰かが手を挙げるとみんな発言したがる」などと発言。4日には、「オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な表現だった。深く反省している」として発言を撤回し、謝罪した。
声明は、森氏が4日にこの発言を謝罪し撤回しているものの、辞任は否定していることについて、「極めて公的な立場においてあからさまなジェンダー差別を行いながら、その責任が問われないままになることは、社会が女性への抑圧・蔑視を、言外に、しかし明確に許容することにつながります」と指摘。森氏が過去にも悪質な差別発言を指摘されていながら公的地位に就き続けていることにも言及した。
その上で、「ミソジニーと偏見が黙認され続ける社会では、幼少時から人生のあらゆるステージでジェンダー・バイアス(性差による先入観)が植え付けられ、再生産されます」と問題の重要性を強調。「今回のJOC評議員会での発言、そしてその場で『笑いが起きた』という状況は、将来にわたって女性たちの声と尊厳を奪おうとするもの」と強く批判した。
また、日本が女性差別撤廃委員会(CEDAW)を含む複数の国際人権条約委員会から受けた勧告の多くが未履行のままで、度重なる再勧告を受けていることを挙げ、「ジェンダー・ギャップ」指数は153カ国中121位という低水準にあることを指摘。「ミソジニーの再生産を止め、社会を変えることが必要」と強調した。
日本YWCAが「若い女性をエンパワーし、共に社会変革を進める」というミッションのもと、第5次男女共同参画基本計画への意見提出を含む多くの発信を行っていることに触れ、「若い女性たちが本来持つ権利を享受し、自らの可能性を万全に追求できる社会を求める」とし、森氏の発言に強く抗議し、辞任を求めるとした。