マイク・ポンペオ米国務長官は19日、声明(英語)を発表し、中国が同国西部の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で、イスラム教徒が主体のウイグル族をはじめとした民族的・宗教的少数派に対し、国際法上の犯罪である「ジェノサイド」(大量虐殺)を行っていると認定した。
ポンペオ氏は声明で、入手可能な事実を精査した結果、中国政府は少なくとも2017年3月以降、同自治区のウイグル族やその他の民族的・宗教的少数派に対し「人道に対する罪」を犯していると認定。こうした国際法上の犯罪は現在も進行中で、▽100万人以上の民間人に対する恣意的な収監とその他の厳しい身体的自由の剥奪、▽強制的な不妊手術、▽恣意的に拘束した人々への拷問、▽強制労働、▽信教の自由や表現の自由、移動の自由に対する厳しい制限などが含まれるとしている。
さらに、同じく入手可能な事実を精査した結果、中国政府は同自治区のウイグル族などに対しジェノサイドを行ってきたと認定した。ポンペオ氏は「ジェノサイドは現在も継続しており、われわれは中国政府によるウイグル族の組織的壊滅に向けた試みを目撃している」と言明。「地球上で2番目に経済的、軍事的、政治的に強力な国の統治当局は、脆弱(ぜいじゃく)な民族的・宗教的少数派を強制的に同化させ、最終的には抹殺しようとしている」と語った。
その上で米国は中国に対し、収監・拘束中の人々の解放や強制労働などの制度廃止、強制不妊手術や強制中絶、強制避妊などによる強制的な人口管理措置の中止などを求めるとした。また国際機関に対しては、中国のこうした残虐行為の責任を追及する米国への協力を求めた。
ポンペオ氏は、同自治区の弾圧に関与する中国共産党幹部や国営企業に対して、米国がさまざまな制裁措置を行ってきたことを強調。「われわれは沈黙しない。もし中国共産党が、自国民に対しジェノサイドと人道に対する罪を行うことが許されるならば、そう遠くない将来、この自由な世界にどのようなことが起こるかを想像してほしい」と訴えた。
米国では20日に次期大統領の就任式が予定されており、19日はポンペオ氏の任期最終日だった。ロイター通信によると、ジョー・バイデン次期大統領は昨年11月の米大統領選前、同自治区でジェノサイドが起きているとの見解を示していた。そうしたことから、米国内の政治的な混乱などを踏まえ、ジェノサイドの認定はバイデン氏の就任まで見送られるとの観測があったという。一方、中国問題に関する米連邦議会行政府委員会(CECC)は14、中国によるウイグル族に対するジェノサイドの可能性を指摘する報告書を発表していた。