第2次世界大戦後間もなく、ドイツの教会が戦争に関わる罪を告白した「シュトゥットガルト罪責宣言」が発表されてから75周年を迎え、宣言発表の地であるドイツ南部の都市シュトゥットガルトで18日、記念礼拝が行われた。ドイツ福音主義教会(EKD)のハインリヒ・ベドフォードストローム議長が説教を取り次ぎ、世界教会協議会(WCC)のイオアン・サウカ暫定総幹事もあいさつを寄せ、宣言の意義を語った。
シュトゥットガルト罪責宣言は、敗戦から約5カ月の1945年10月18~19日、空襲で焼け野原となったシュトゥットガルトで開かれたEKDの第2回評議員会で発表された。EKDは、戦後ドイツのプロテスタント教会が合同してできた教会で、評議員会には、ナチス・ドイツに抵抗したドイツ教会内の運動組織「告白教会」の指導者を中心とした評議員11人のほか、当時結成中だったWCCのフィッセルト・ホーフト総幹事(当時)を中心とした各国教会指導者の代表団が参加した。
第2次世界大戦は参戦国の教会間にも深い傷を残しており、WCCにとって、教会間の「和解」は大きな課題だった。そうした中、ドイツの教会がいち早く自らの罪を告白したシュトゥットガルト罪責宣言は、その後のドイツ教会と世界教会間の和解と協働に重要な影響を与えたとされている。
宣言の署名者は、「ナチスが最初、共産主義者を攻撃したとき、私は声を上げなかった。私は共産主義者ではなかったから(後略)」の言葉で知られるマルティン・ニーメラーら、評議員会に参加したドイツ教会側の11人。宣言では、ドイツ国民の苦難を全面的に共有するとするだけでなく、教会も「その罪責に連帯」すると表明。その上で「大きな痛みをもって、われわれは告白する。われわれによって、限りない苦難が多くの諸国民や諸国の上にもたらされた」としている。
一方、宣言は「われわれは確かに、長年にわたりナチ的暴力支配の中にその恐るべき表現を取ってきた精神に対して、イエス・キリストの御名によって闘ってきた」とも述べる。しかし続けて「われわれは、われわれ自身を告発する」として、「われわれは、もっと勇敢に告白しようとはしなかったこと、もっと誠実に祈ろうとはしなかったこと、もっと喜ばしく信じようとはしなかったこと、もっと熱烈に愛しようとはしなかったことを」と告白している。
この宣言が発表された後、ドイツ国内では教会内外で激しい論争が起こった。ベドフォードストローム議長は説教でそれにも触れ、「ドイツ国民が心から罪責を受け入れることがいかに難しかったか」を示していると語った。
一方、宣言にはユダヤ人虐殺に関する直接の言及はない。ベドフォードストローム議長は、「シュトゥットガルト罪責宣言の欠点、特にユダヤ人に対する罪の意識についての明確な言及がないことに触れずして、この宣言を記念することはできません」と指摘。ナチス・ドイツから「劣等民族」とされ、虐殺の対象となったユダヤ人やシンティ・ロマ人の指導者らと共に今年初め、ポーランドのアウシュビッツ強制収容所跡地を訪問したことを語った。
WCCのサウカ暫定総幹事は、新型コロナウイルスの影響で記念礼拝には出席できなかったが、あいさつを送り、シュトゥットガルト罪責宣言は「敵意を克服し、WCCの加盟教会間、ひいては加盟教会が属する民族間の平和と和解のための共通の探求に向けた扉を開いた」と述べ、その意義を語った。
また、ドイツの教会指導者とホーフト総幹事ら代表団は当時、「ドイツが対等な立場で欧州連合体に参加しなければ、欧州の平和は実現しないということで一致していた」と指摘。「彼らの考えは、欧州連合の設立を先取りしていた」と述べ、宣言の立役者たちの先駆性を伝えた。