バチカン(ローマ教皇庁)教理省は、22日発表の生命倫理をめぐる書簡「サマリタヌス・ボヌス」で、安楽死について「人命に対する犯罪」と明言するとともに、あらゆる形の自殺ほう助にも反対する立場を示した。バチカン公営のバチカン・ニュース(日本語版)が同日伝えた。
書簡は、重篤な臨床段階、または終末期にある患者の治療をテーマに、福音書にある「善きサマリア人」のメッセージを実践する際の具体的な指針を示すために書かれた。「治らない患者は、治療できない患者では決してない」と説き、たとえ治ることが不可能、またはその可能性がないように思われる場合でも、医療・看護的、心理的、霊的に寄り添うことは「避けることのできない義務」とした。
安楽死については、あらゆる状況において「本質的に悪い」行為とし、いかなる権威も合法的に強要、もしくは許可することはできず、緩和ケアの中にも安楽死の可能性は決して含まれてはならないと強調した。苦痛緩和のための鎮静措置についても、直接的かつ意図的に死をもたらすために行われることは容認できないとし、意識のない植物状態の場合でも、患者はその価値を認められ、ふさわしい治療とともに看護されなければならないとした。
一方で、患者の家族と医療従事者に対する支援の必要性を強調し、患者をケアする家族を支えるために、国が必要な予算を確保し、システムを整備することが必要だとした。また、地域の教会が安楽死や自殺ほう助に反対する立場を明らかにし、カトリック系の医療機関がその方針を実践するよう求めた。