1.垂直指向の韓国人
「私は、南米かヨーロッパに大きな伝道集会を開いてリバイバルを起すつもりでいました。日本に対しては、特に重荷を持っていませんでした。ところが、腎臓病治療のため人工透析を受けに定期的に日本に滞在しているうちに、日本人が好きになり、急に日本宣教への熱い思いが湧きあがってきたのです。皆さん、これから私と一緒に日本人の救いために大々的な宣教活動を展開しようではありませんか!」。
韓国オンヌリ教会の主任牧師ハ・ヨンジョ先生は、自分の教会でこう発表しました。突然の方向転換に教会員の皆さんは戸惑いながらも、毎朝の早朝祈祷会や金曜日の徹夜祈祷会で祈っていると、どんどん日本宣教への熱い思いが盛りあがってきました。「日本の救いのために祈っていると、なぜか日本人がいとおしくなり、涙が止まらないのです」。反日感情を持っていた著名な女性弁護士は、韓国訪問中の私に正直に語ってくれました。
こうして、わずか一年もたたないうちに、「ラブソナタ」という、大々的な日本宣教の火蓋が切られ、オンヌリ教会による日本縦断伝道が敢行されました。昨年の埼玉アリーナにおける2万5千人の東京ラブソナタ大会には、11機の飛行機をチャーターして韓国から5千人のクリスチャンが応援にかけつけてくれたのです。
オンヌリ教会では、すでに千人を超える宣教師を海外に派遣しています。数年内に宣教師の数を2千人にするそうです。オンヌリ教会を訪問した時に、私はある集会室に通されました。壁に大勢の人たちの額縁入りの顔写真が飾ってあります。「どなたたちの写真ですか?」とたずねると、「海外で殉教した宣教師たちの写真です」と言うではありませんか!殉教者たちの写真を見ると、教会員の皆さんの心が燃えて、宣教師志願者が続出するそうです。最近のイスラム教圏での殉教者の多くは、彼らの仲間です。この韓国の皆さんの熱狂的な情熱はどこから来るものでしょうか。日本人のクリスチャンとしては、うらやましい限りです。
韓国人の特徴は、「垂直指向型」と言うことができます。もともと唯一なる神(ハナニム)が一般的に信じられていた韓国では、唯一神をあがめるキリスト教は受け入れやすかったのではないでしょうか。天の父なる神を第一とするがゆえに、自分の住んでいる家を売って教会堂の建築資金として捧げたり、通勤電車やバスの中でも大声で福音を伝えることができるのです。でもそれは当然に、同調できない家族や周囲の人たちの反発を買うことになり、喧嘩や紛争が絶えない事態を生み出しています。
2.水平指向の日本人
八百万の神を拝み、世間体や人間関係を重視する日本人は、韓国人のようにストレートな神第一の行動が取れません。「あの人はクリスチャンだったのか。そういえば、そんな感じだったね」。教会での葬式の帰り道、会社の仲間たちがよく語っていることです。何十年会社勤めをしても、周囲の人たちはその人がクリスチャンであることを知らなかったのです。会社での人間関係を気にして一度もクリスチャンとしての証をしたことがないキリスト信徒は、日本には大勢いるはずです。日本人の特徴は、「水平指向型」なのです。
「いやー、橋本さんがクリスチャンであることを、昨日ハーベストタイムを見て初めて知りました。大変失礼しました。実は、誰にも言っていませんが、私もクリスチャンなのです」。かつて富士銀行の頭取をしていた橋本徹さんは、キリスト教テレビに出演した後で、同行の他の取締役からこう言われ、とても驚いたそうです。それ以後、橋本さんは社内、社外を問わず積極的に証しするようになりました。
3.垂直指向と水平指向の結合
韓国人は神を優先するあまり、人間関係がうまくいかない。日本人は人を重視するあまり、神に従うことに躊躇してしまう。この「垂直指向型韓国人」と「水平指向型日本人」が仲よくして、一緒に行動したらどうでしょうか。韓国人は人間関係をもっと大切にするようになり、日本人は神さまとの関係をもっと重視するようになるのではないでしょうか。
「何十年も停滞していた教会が、韓国の若い牧師に牧会をお願いしたら、急に活気づいてきました。教会に来る若者たちが増え、いままで一度もしたことがなかった路傍伝道まで始めたのです。今は大きな会堂を建築中です」。こんな話を日本の各地で聞きます。
その反面、「私は韓国に帰りたくありません。韓国では人間関係がうまく行かないので、日本でずっと暮らしたいのです」という韓国人留学生を何人も知っています。
「心を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神を愛しなさい」「自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい」。これが、聖書の真髄です。「神を愛する」垂直指向型韓国人は、いわば十字架の縦軸であり、「隣人を愛する」水平指向型日本人は、その横軸です。垂直指向と水平指向が結合されるとキリストの十字架になる。ここに、日本人と韓国人の見事な違いを作られた神さまの、「絶妙なご計画」を思わされます。
これまで長い間、韓国と日本は、「近くて遠い国」でした。それは、両国の間に愛がなかったため、垂直指向と水平指向がうまくかみ合わなかったからだと思います。けれども今や、イエス・キリストの十字架の愛によって日韓両国が結びあわされるなら、そこに理想的な神の国が実現するのではないでしょうか。
佐々木満男(ささき・みつお):国際弁護士。宇宙開発、M&A、特許紛争、独禁法事件などなどさまざまな国際的ビジネスにかかわる法律問題に取り組む。また、顧問会社・顧問団体の役員を兼任する。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。