パキスタンに住むキリスト教徒の男性が、フェイスブックにイスラム教の預言者ムハンマドを侮辱する内容を投稿したとして、冒瀆(ぼうとく)罪で逮捕・起訴された。最悪の場合、男性は死刑判決を受ける可能性がある。
パキスタンの迫害下のキリスト教徒を支援する超教派団体「CLAAS」(本部・英ロンドン、英語)によると、冒瀆罪で逮捕・起訴されたのは、パキスタン東部パンジャブ州ノーシェラ・バーカーンに住むソハイル・マシフさん。フェイスブック上の投稿が問題視されると、すぐに警察に通報され、5日に逮捕された。
マシフさんの逮捕が地元で知られると、警察署の前には人だかりができ、さらにマシフさんの件が正式に事件化されていないことが分かると、集まっていた群衆は激怒し、数人が警察署内に入り込み、怒号を飛ばすなどしたという。警察はこうした抗議を受け、パキスタンの刑法295-A項と295-C項に基づき、マシフさんを起訴した。
295-C項は、イスラム教やムハンマドに対する軽蔑的な発言の使用を禁止しており、違反した場合は死刑に処することを定めている。2018年に逆転無罪を勝ち取るまで、死刑判決を受けながら10年以上収監されていたキリスト教徒の女性アーシア・ビビさんも同項で冒瀆罪に問われた。
CLAASのディレクターであるナシル・サイードさんによると、パキスタンでは同様のケースは他にもあり、複数のキリスト教徒が携帯電話やパソコンで、イスラム教を冒瀆するコンテンツを共有したり、所有したりしていたとして罪に問われている。
「第3者が簡単にキリスト教徒に嫌がらせをでき、『証拠を仕込む』ことのできるワッツアップのようなソーシャルメディアの悪用を防ぐのは難しいです。例えば、誰かがあるキリスト教徒のページに冒瀆的なコンテンツを共有した場合、たとえそのキリスト教徒がそのコンテンツに直接関係していなくても、冒瀆罪に問われる可能性があるのです」
カトリック系のUCAN通信(英語)によると、マシフさんは7月31日~8月3日に祝われたイスラム教の祭日「イード・アル・アドハー(犠牲祭)」に関連して、フェイスブックに次のように投稿した。
「ヤギや雄牛の血が罪を洗い流すことができるはずがない。ミラージュの出来事(ムハンマドが天に昇って預言者たちと話をしたというイスラム教の教え)はうそに基づいている」
UCAN通信によると、地元のモスクの指導者であるアラーマ・ムハンマド・アブドゥル・サタール氏がマシフさんを刑事告発したという。
CLAASによると、パキスタンではこれまで、キリスト教徒に対する冒瀆的な疑義が出た後には、キリスト教のコミュニティーに対する暴動が起こり、民家や教会が放火されたり、殺害されたりするケースもあり、現地のキリスト教徒は今回の件で「おびえている」という。しかし、これまでのところ、マシフさんが住んでいたノーシェラ・バーカーンのキリスト教コミュニティーには警察が配備され、暴動が発生したなどの情報は入っていないという。