国連が掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)に、18番目のゴールとして「LIFE UNBORN(生まれる前から子どもを守ろう)」を追加することを訴えるデモ行進「マーチフォーライフ(March for Life)」(同実行委員会主催)が23日、東京・日本橋の常盤公園を出発点に行われた。あいにくの雨の中、約70人が集まり、日比谷公園までの約1時間の道のりを「LIFE UNBORN」「LIFE IS A GIFT」などと書かれたプラカードを手に練り歩いた。
1948年7月13日に現在の母体保護法の前身である優生保護法が成立したことを覚え、「小さないのちを守る会」の辻岡健象代表らクリスチャンの有志が呼び掛け人となり、6年前から毎年この時期に行ってきた。年々参加者が増えており、昨年はこれまでで最も多い300人近くが参加した。呼び掛け人の池田正昭さんは、「人数は少ないが、コロナ禍でも皆よく集まってくれてほっとしている。7年目を迎え、すっかりなくてはならない取り組みになっているという思いを新たにしたので、来年以降、大きな盛り上がりにしていきたい」と語った。
昨年までは、国内にプロライフ(中絶反対)運動を広めていくことを主な目的として行ってきたが、池田さんは「潜在的に日本はプロライフの国」と指摘する。
埼玉県のあるクリニックで後期人工妊娠中絶が行われているとの内部告発があり、社会的な注目を集めた事件があった。ちょうど海外では、米ニューヨーク州が妊娠24週以降でも中絶する権利を守る州法を成立させ、これに続くべきだとの主張が広がりを見せていた時期だった。池田さんは、事件を伝える大手ニュースサイトのコメント欄に後期中絶の必要性を訴える声はなく、代わりに「命は授かりもの」「堕胎なんてなくなってほしい」など、プロライフのメッセージがずらりと書き込まれているのを見て驚いたという。
「妊娠全期間の中絶合法化という決定を支持する人は、日本人にはほとんどいないのだろうと思う。『中絶はできればないほうがいい』『仕方のないもの』という、言ってみれば『ゆるやかなプロライフ』がほとんどの日本人の立場ではないか」と池田さんは話す。一方で世界的なSDGsの議論では、「誰一人取り残さない世界」をゴールに掲げるものの、立場の強い「女性の選択権」を追求するあまり、「胎児の生命」がおろそかにされていると危惧する声が上がっている。
池田さんは、「昨年の教皇来日のテーマ『すべてのいのちを守るため』は、教皇フランシスコが日本に残した預言だと思う。キリスト教では被宣教国の日本だが、プロライフの分野では潜在的な価値観を世界に届けるミッションがあるのではないか。他宗教の方々とも連携し、国連に対する訴え掛けを進めていきたい」と語った。