韓国のカトリック仁川(インチョン)教区は19日、仁川カトリック大学初代総長であった司祭が約20年前、在職時に神学生ら9人に性的虐待を行っていたとして、教区長の鄭信喆(ジョン・シンチョル)司教名による謝罪文(韓国語)を教区のホームページで発表した。加害司祭は8日に免職処分とされ、鄭司教は謝罪文で「(加害)司祭のために一生忘れられないことをされた被害者と家族に深く謝罪し、今回の状況を反省と刷新の契機にしたい」と述べた。
この事件は16日、韓国のテレビ局SBSの事件追跡番組「それが知りたい」が特集。仁川教区は番組放送の数日前に記者会見を開き、加害司祭を免職処分としたことや、一連の経緯を説明していた。
韓国のネットメディア「カトリックニュース・今ここ」(韓国語)によると、加害司祭は仁川カトリック大学の総長であった1996~98年、同大の建設募金活動に同行した神学生らに性的虐待を行うなどした。98年5月、英語を教えていた外国人司祭が神学生らと面談する過程で発覚。仁川教区は調査委員会を設置し、調査の結果、加害司祭のすべての職務を剥奪。「仁川教区を離れて一生贖罪(しょくざい)し、静かに過ごすこと」を命じ、仁川教区から追放したという。
一方、当時の調査資料は「被害者保護」の名目で破棄された。また、加害司祭は水原(スウォン)教区の管轄地に移り、教区未承認の修道会や障がい者施設を設立し、司祭としての職も維持したまま活動を継続。仁川教区は、当時は断固とした処分だと判断していたが、結果的には適切ではなかったと認めた。ただし2016年に仁川教区長に就任した鄭司教はこれまでも、加害司祭に対しては活動を停止するよう警告し、水原教区も活動休止を要請していたという。
番組「それが知りたい」ではこの他、仁川教区で2006年に叙階された若手司祭のうち2人が09年と14年に自殺した事件も取り上げ、加害司祭による性的虐待との関連性を示唆した。しかしこれについて仁川教区は、2人の入学年は加害司祭が総長を退いた後だとして関係を否定。遺族の意向により別の死因による発表を行った経緯や、亡くなった司祭が留学中に銃乱射事件を経験し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていたことなどを説明した。