元受刑者の社会復帰支援に取り組むNPO法人「マザーハウス」(東京都墨田区)が、太陽光発電所の抱えるメンテナンスの課題と出所者の就労問題をともに解決する新事業を立ち上げようと、必要な資金をクラウドファンディング(CF)で募っている。目標額は100万円で、6月21日まで。
マザーハウスの代表を務める五十嵐弘志さんも、前科3犯で20年近く服役した当事者だ。自身が更生するきっかけとなったキリスト教の精神に基づいた社会復帰支援を行おうと、8年前にマザーハウスの活動を始めた。スタッフにも出所者が多く、当事者目線に立った支援を目指している。
再犯者の割合が年々増え続ける中、国や地方自治体も再犯防止に力を入れている。特に、就労の確保に向けた支援の充実は重要課題とされているが、企業が受け入れても職場の同僚や取引先にまで理解が及んでいないことや、出所者が前科を隠して過ごさなければならない心理的ストレスに悩んでしまうなど、継続した就労が難しいという現実がある。
新事業では、出所者を対象に「刈払機取扱作業者」の資格取得を支援し、協力企業と協働で岡山県と群馬県にある大規模太陽光発電所でのメンテナンス作業を泊まり込みで行う。太陽光発電施設が東日本大震災後に全国で急増する一方で、除草や雪かきなどのメンテナンスが運営上の難点になっており、今後も需要が見込まれるという。将来的にはノウハウを蓄積し、自立的な運営につなげていきたい考えだ。
五十嵐さんは、「自暴自棄になっていたり、居場所をつくることが難しくなっていたりする受刑者や元受刑者に対して社会に居場所があることを伝え、前向きに人生と向き合い直していける変化を起こしたい。個人の変化が社会の変化につながることを伝えていきたい」と話す。
寄付の額は千円から5万円までで、リターン品との組み合わせで8コースを用意。寄付者には、受刑者ら有志が描いた絵画やメッセージをポストカードなどにした「獄ポス」や、マザーハウスが活動の一環として販売するフェアトレードコーヒー「マリアコーヒー」などがリターン品として送られる。集まった寄付金は、資格取得のための講習費用やオリジナルの作業着制作、除草機などの設備投資、運搬・移動費、宿泊・滞在費などに充てる。詳細はCFサイトを。