日本キリスト教協議会(東京都新宿区、NCC)は28日、法務省が同日2人の死刑を執行したと発表したのを受けて、「死刑執行の『自動化』が本格的になり、国家の暴力的体質の増幅を懸念」するとした抗議声明を発表した。死刑制度に関しては昨年、国連で死刑執行の一時停止を求める総会決議が初めて採択。30日には国連の自由権規約委員会が、日本の人権状況に関する審査報告書で「(死刑制度の廃止を)世論調査と関係なく、前向きに検討すべきだ」(共同)と勧告する内容を発表した。
法務省は28日、福岡拘置所収容の久間三千年(70)と、仙台拘置所収容の高塩正裕(55)の2人の死刑を執行したと発表した。執行は9月11日以来で、今年に入り5回目。森英介法相の9月就任以来では今回が初めて。93年3月以前の中断期以降では合わせて75人の死刑が執行されたことになる。
NCCは声明で、「『神の被造物』である『ひとつのいのち』を、国家の暴力によって奪う死刑執行の加速化に強く反対」すると、今回の死刑執行を強く非難。また、欧州連合(EU)議長国であるフランスも同日、「深く憂慮する」という声明を発表。日本に死刑執行の一時停止と、死刑制度の廃止を検討するよう求めた。
法務省が同日発表した確定犯罪事実要旨によると、久間死刑囚は92年、福岡県飯塚市の路上で、当時7歳であった小学1年生の女児2人を登校中に乗用車で誘拐。その後、首を絞めて殺害し、同県甘木市(現朝倉市)の山中に2人の遺体を遺棄した。高塩死刑囚は04年、正体を隠して福島県いわき市の知人宅に「強盗だ」などと叫んで押し入ったが、正体を見破られたことから、次女(当時55)と知人の妻(当時83)をナイフで多数突き刺し失血死させた。
日本の死刑制度に関しては、国連の自由権規約委員会が30日、98年以来10年ぶりとなった対日審査の最終報告書を発表。近年執行数が増加していることに懸念を表明し、執行当日まで事前の告知がないことや、高齢者に実施されたことなども問題視した。また、日本政府が世論の廃止指示が少ないことを理由に制度維持を主張していることについては、「廃止が望ましいことを一般に知らしめるべきだ」とした。
国連の報告書に対して、人権団体のアムネスティ・インターナショナル日本の寺中誠事務局長は、「予想されたほぼすべての問題でより具体的な勧告が出た。日本の人権に対する国際社会の目は厳しさを増している」(共同)と歓迎。一方で、日本政府筋は、十分に理解が得られず残念だなどと語った。