オーストラリアの連邦最高裁は7日、1996年に聖歌隊の男子児童2人(いずれも当時13)=1人はすでに死亡=に性的虐待を働いたとして、罪に問われていたバチカン(ローマ教皇庁)元財務長官のジョージ・ペル枢機卿(78)の上告審で、下級審による実刑判決を判事7人全員一致で破棄し、無罪を言い渡した。収監されていたペル枢機卿は同日、釈放された。バチカン・ニュース(日本語版)などが伝えた。
ペル枢機卿をめぐっては、メルボルン地裁が2018年12月に有罪とし、禁錮6年の実刑判決を言い渡し、19年8月の控訴審でも、ビクトリア州最高裁が同地裁の判決を支持。ペル枢機卿の控訴を棄却していた。ペル枢機卿は一貫して無罪を主張し、連邦最高裁に上告していた。
英BBC(日本語版)によると、連邦最高裁は判決で、陪審は証拠を合理的に扱ってはいたものの、すべての証拠を十分に検討しなかったとし、ペル枢機卿の有罪については疑念を抱くべきだったとした。
ペル枢機卿は同国のカトリック教会では最高位を務め、2014年にはローマ教皇フランシスコの任命により、バチカンで3番目の地位に当たる財務長官に就任した。性的虐待で訴えられたカトリックの聖職者としては最高位の人物で、昨年2月に有罪が公表された後には、財務長官の肩書を剥奪されていた。
判決後の声明でペル枢機卿は、これまで受けた不正義が「是正された」としたが、「告発者を悪く思う気持ちはない」と述べた。