最近は、誰も彼もが「コロナ」の話題を口にする。そんな状況を反映してか、「コロナ疲れ」や「コロナ鬱(うつ)」、また感染者を「コロナーマン」とからかうような造語さえ飛び交っている現状がある。
こういったシニカルな時期だからこそ、ちょっとユニークで新しい視点を提供してくれる海外のアンケート結果を紹介したい。結果をニヤニヤして見ながら、またそこに込められた深い意味を考察するという健全な時間を過ごしてみてはいかがだろうか。
そのアンケートとは、米国の世論調査機関であるピュー研究所が実施したものだ。17日付の記事「米国人が特定の宗教について考えるとき、最初に思い浮かべる人物とは」(英語)で、興味深い結果が示されている。結果は以下のようになっている。
カトリックといえば・・・
- 教皇 47%
- イエス・キリスト 12%
- 家族・友人・知人・自分 6%
- 処女マリア 5%
確かにカトリックにおいて、教皇が現代のアイコンであることは間違いない。しかし歴史的に見るなら、そしてキリスト教の元祖(本家?)であることを鑑みるなら、当然イエス・キリストがトップにならなければならないはず。だが結果は、「神の子」であるイエス・キリストに4倍近い大差をつけて、教皇が1位となった。逆に言えば、彼以外にイメージできる人物がいないというところが、いかにもヒエラルキー型機構を生み出したカトリック教会だといえるかもしれない。
プロテスタント(福音派)といえば・・・
- ビリー・グラハム 21%
- マルティン・ルター 5%
- イエス・キリスト 5%
- 家族・友人・知人 2%
こちらもカトリックと同様、開祖であるイエス・キリストの上に、米国の牧師であり、世界的なキリスト教伝道者であった故ビリー・グラハムが鎮座する。やはり米国人にとって、ビリー・グラハムを超える存在はいないのだろう。たとえ、われらの罪を贖(あがな)われた神の子イエス・キリストであったとしても・・・。また、カトリック教会に抗議(プロテスト)して宗教改革を起こしたマルティン・ルターも、イエス・キリストと同じ5%だった。
ついでに皮肉な結果も明記しておこう。「福音派のプロテスタントと聞いて最初に思い浮かべる人物は?」という質問に対し、最も多い回答は「誰もいない」であった。しかもその割合は46%に上る。これはビリー・グラハムの倍以上。「キリスト教国アメリカ」の内部は、かなり「脱宗教化」しているのかもしれない。
ユダヤ教といえば・・・
- イエス・キリスト 21%
- モーセ 13%
- アブラハム 8%
- 家族・友人・知人・自分 5%
この結果も、「アメリカだな」と思わせるものだ。モーセやアブラハムの名前が上がるのは当たり前としても、イエス・キリストが1番とは・・・。ユダヤ教の正典である旧約聖書に一度も登場しない人物が1位を獲得するとは、あり得ない快挙である。つまり、米国におけるユダヤ教の位置付けは、「キリスト教」という窓を通してしか見られていない、ということなのだろう。個人的には、「信仰の父」であるアブラハムの方が上であってもらいたかった。
仏教といえば・・・
- ブッダ 55%
- ダライ・ラマ 7%
- マハトマ・ガンディー 3%
- 家族・友人・知人 2%
ブッダが過半数を獲得。これは穏当な結果である。そして次は、チベット仏教界のアイコンとして今も存命中のダライ・ラマ。しかし、3位に入ったマハトマ・ガンディーはヒンズー教徒だと思うのだが、米国人の理解はこの程度なのかもしれない。
イスラム教といえば・・・
- ムハンマド 26%
- 神・神々 8%
- オサマ・ビンラディン 5%
- モハメド・アリ 4%
1位は教祖ムハンマド。そして2位には「神・神々」がくるが、3位は米同時多発テロ(9・11)の首謀者オサマ・ビンラディン。やはり米国人にとって9・11は忘れられない歴史的事件であり、その首謀者として知名度が高いことが分かる。そして4位は、イスラム教に改宗し、名前もカシアス・クレイから改名したボクシング選手の故モハメド・アリ。
無神論といえば・・・
- 家族・友人・知人・自分 10%
- 悪魔 6%
- リチャード・ドーキンス 4%
- マダリン・マレー・オヘア 4%
これはかなりマニアック。ちなみに「誰もいない」が51%と過半数を獲得したのは、ある面では「宗教国家アメリカ」を象徴しているかもしれない。しかし、無神論ということで、家族や友人、知人、また自分自身を思い浮かべるという人が10%に上るというのは、次第にその数を増やしている非宗教的素養を持った現代人が増えていることの証左といえる。
2位は悪魔! しかしこれは、宗教性を持っている人でないと回答できないのではないだろうか・・・。3位のリチャード・ドーキンスは、創造論の痛烈な批判者として知られる英国の生物科学者。4位のマデリン・マレー・オヘアは、米国の女性無神論活動家だ。すでに亡くなっているが、過激な言動で批判も多く、その半生は「アメリカで最も嫌われた女性」として映画化されている。
まとめ
いかがだっただろうか。宗教的なことに少なからず興味を持っている人なら、十分楽しめたと思う。そうでない人は、ぜひ自身の回答と比較してみてもらいたい。さしずめ私ならどう答えるだろうか。以下に列挙しておく。私の精神構造を丸裸にしてくださっても結構である。
- カトリックといえば・・・ペテロ:初代教皇にして既婚者!
- プロテスタントといえば・・・新島襄:同志社で講師をしているからといって、こびているわけではありません。
- ユダヤ教といえば・・・パリサイ人・律法学者:イエス様のライバルたちですね。
- 仏教といえば・・・空海:日本史の教科書で読んだインパクトが忘れられなくて・・・。
- イスラム教といえば・・・タリバン:人ではなく組織ですが、ちょうど話題になった時期に大学院生でした。
- 無神論といえば・・・教会に来ているご婦人の旦那さん:よく面談するとそう言われます。「妻はともかく、私は無神論です」みたいなことを。でも動じません。
いずれにせよ、世の中は新型コロナウイルスにより「延期」「中止」「自粛」という言葉が飛び交う今日この頃。このままでは海外に旅行へ出掛けることはおろか、そのうち家から出ることもままならなくなってしまいそうだ。そんな内向きな雰囲気が高まっているときだからこそ、想像力と発想でいろいろな楽しみ方を実践してみたい。
◇