4月末に開かれるイスラエルの建国記念式典に出演する日本のクリスチャン音楽家約40人を祈りのうちに送り出そうと、ツアーを企画するブリッジス・フォー・ピース・ジャパン(B.F.P. Japan)が11日、決起集会として淀橋教会(東京都新宿区)で「東京オープンハイナイトxBlessing Zion 2020」を開催した。集会には約850人が参加し、ユダヤ人の迫害の歴史をたどるとともに、式典で歌うツアー参加者のために祈りをささげた。
日本のクリスチャン音楽家たちが出演するのは、イスラエルの二大建国式典の一つで、ユダヤ人の若者向け教育機関「マーチ・オブ・ザ・リビング(MOL=いのちの行進)」が主催する式典。MOLは毎年、ホロコースト記念日に、ポーランドのアウシュビッツとビルケナウの両強制収容所間の約3キロを歩く「いのちの行進」を行い、建国記念日には、エルサレム市内を「嘆きの壁」まで行進するとともに式典を開いている。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の記憶を風化させないよう1988年に始まり、ユダヤ人の若者を中心に毎年約1万人以上が参加。これまでに世界52の国と地域から約26万人が参加している。
23年にわたって日本とイスラエルの架け橋となる働きを行っているBFPジャパンは、イスラエル建国60周年の2008年に、中国、台湾と合同で初めてMOLツアーを開催。16年のツアーには、教会での活動も多い日本のロックバンド「ナイトdeライト」が参加し、式典でユダヤ人以外では初となる出演を果たした。そして今年は、クワイア指導者を中心とした日本のクリスチャン音楽家約40人が参加するツアー「Blessing Zion 2020」を企画。ユダヤ人以外が式典の舞台に立つのは、ナイトdeライト以来2回目となる。
決起集会では、ナイトdeライトが友情出演としてステージに上り、「感謝と喜びを」「罪咎(とが)を赦(ゆる)され」など3曲を演奏。イスラエル政府公認ガイド・記者の石堂ゆみさんが、ユダヤ人の誕生から現在に至るまでの歴史を概説し、約1700年にもわたる根深い反ユダヤ主義の歴史があることを説明した。
しかし、そうした迫害の中でも、希望を失うことなく信仰を守り通してきたのがユダヤ人の歴史。第2次世界大戦では、ホロコーストにより欧州にいたユダヤ人の3分の2に相当する約600万人が虐殺されたが、それでも彼らの信仰が折れることはなかった。そして、約1900年にわたる放浪の歴史に終止符が打たれ、1948年にはイスラエルが建国。石堂さんは、こうしたイスラエルの苦難と建国の歴史はまさに、ユダヤ人たちが信じる神の実在性を示してくれると言い、同じ聖書の神を信じるクリスチャンを励ました。
石堂さんの講演の後には、B.F.P. Japan の津坂良夫理事(福生ベテル教会牧師)が、ツアー参加者のため、式典に参加するユダヤ人のため、ホロコースト生存者のためなど、集会参加者と共に応答の祈りをささげた。
再びステージに立ったナイトdeライトは、2016年のツアーで訪問したアウシュビッツ強制収容所での体験や、杉原千畝が発給したビザによって救われたホロコースト生存者との出会いを分かち合い、4年前の式典で歌った「Let Every Nation」を演奏。今年のツアー参加者のために用意したというオリジナルのリストバンドを、チャプレンとして同行する永井信義氏(東北中央教会牧師)に託した。
その後、今年の「Blessing Zion 2020」ツアー参加者による特別クワイアが登壇。式典で歌う予定の「Al Kol Eleh(アル・コル・エレ)」を熱唱した。この曲は、イスラエルで最も愛された作詞・作曲家、故ナオミ・シェメルが1980年に作詞した国民的歌曲で、建国70周年の2018年にもイスラエルで大々的に歌われた。迫害の歴史を通して受けた悲しみやイスラエル帰還後の労苦と犠牲、また再建後の誇りと感謝を歌っている。
最後には、B.F.P. Japan の三橋恵理哉(えりや)理事(札幌キリスト福音館牧師)が祈りをささげ、集会の参加者全員で同曲と賛美「ほむべきかな イスラエルの神」を歌い、決起集会は幕を閉じた。
「Blessing Zion 2020」ツアーの参加者は、4月23日に日本を出発。カイザリヤやナザレ、ガリラヤ湖周辺、死海周辺などを訪れた後、29日に建国記念式典に出演する。式典は現地時間午後8時(日本時間30日午前2時)から始まり、MOLの公式サイト(英語)ではライブ中継も行われる。