英国は現地時間1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)、欧州連合(EU)から正式に離脱した。前身の欧州共同体(EC)から47年間にわたって加盟してきた歴史に幕を下ろし、新たな時代を迎えることになる。
積極的な離脱推進派のボリス・ジョンソン首相は、離脱1時間前に国民に向けたビデオメッセージを公開。「新たな時代の夜明け」だと述べ、離脱が「正しい」選択だったと訴えた。一方、離脱をめぐっては国論が二分し、特に離脱派が僅差で勝った2016年の国民投票以降、英国社会に大きな分断をもたらしてきた。英国の教会指導者らも、EUからの正式離脱を受けコメントや声明を発表。分断を乗り越え、共通のビジョンに向かって国が一致していくことの必要性を訴えた。
イングランド・ウェールズ・カトリック司教協議会会長で、ウェストミンスター大司教のビンセント・ニコルス枢機卿は、「思いやりをもって互いに献身する」(英語)と題した声明を発表。「英国がEUから正式に離脱するこの時、われわれは社会のさまざまなレベルで明らかになってきた分断を乗り越える機会を手にしている」と述べ、「すべての人が、日々の思いやりの行動を通して、また善き隣人であることを通して、見知らぬ人々を歓迎し、社会の最も弱い立場にある人々を支援することを通して、互いに対する献身を新たにすることが重要です」と訴えた。
英国国教会トップのカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは、英BBCラジオ4の番組で、「たとえ大きな相違があったとしても、この国のための共通のビジョンにおいて、われわれは一つにならなければなりません」とコメント。「われわれがなす未来のために、われわれは共に働かなければなりません」と訴えた。
また、ツイッターにはEUからの正式離脱を受けての祈り(英語)を投稿。「必要の多いこの世界で、われわれのビジョンを外へと向かわせてください。戦争の多いこの世界で、われわれを平和の種をまく者としてください。苦しみの多いこの世界で、われわれが善きサマリア人となり、敵さえも祝福することを学びますように」と願いをささげた。
英国国教会ナンバー2のヨーク大主教ジョン・センタムは、地元のヨークシャー・ポスト紙(英語)に寄稿を掲載。離脱をめぐる議論が終わったことを受け入れ、共通のビジョンに向かって進むことの重要性を訴えた。
英国は1973年にEUの前身であるECに加盟。ドイツやフランスと共に主要国の立場にあったが、2002年に共通通貨ユーロが発足した後も、自国通貨ポンドを使い続けるなどした。16年の国民投票で離脱派が僅差で勝利したが、その後も国論が二分。テリーザ・メイ前首相は何度も離脱協定案を提示したが英議会が拒否し、辞任に追い込まれた。英国は1月31日付でEUから正式に離脱したものの、今年末までは移行期間とされ、貿易ルールや法律に変更はなく、この間にEU側と貿易交渉などを行うことになる。