近年の信仰に基づいた映画の成功により、米国では今年もさまざまなキリスト教映画が公開されることになりそうだ。
2018年、クリスチャン歌手バート・ミラード(「マーシーミー」のリードボーカル)の半生を描いた映画「I Can Only Imagine」が、公開1週間で全米興行収入1710万ドル(約18億8千万円)を記録。その後も伸び続け、累計では8300万ドル(約91億5千万円)を達成した。
昨年公開された幾つかの人気映画も宗教的なテーマに基づいている。死亡宣告を受けた少年が、母親の信仰的な祈りで息を吹き返し回復した実話を基にした「Overcomer」もその一つだ。他のハリウッド映画にも、登場人物の信仰にスポットライトを当てた作品が幾つかある。「A Beautiful Day in the Neighborhood」「Harriet」「Dark Waters」などは、大ヒットしたメインストリームの映画となった。
2020年もこのトレンドは続くことが予想される。以下に、米国で公開予定のキリスト教映画を5つ紹介する。
1. I Still Believe
グラミー賞ノミネート経験などがあるクリスチャン歌手ジェレミー・キャンプが、彼の人生で経験した愛、喪失、信仰の感動的ストーリーを伝える本作は現在、2月20日の公開に向け準備が進められている。
本作は、結婚してわずか4カ月余りで、がんにより亡くなった妻メリッサとの結婚生活をつづった伝記映画。カントリー歌手のシャナイア・トゥエインがジェレミーの母親役を演じ、俳優のゲイリー・シニーズが父親役を演じる。メリッサ役は女優のブリット・ロバートソン。ジェレミー役は、テレビシリーズ「Riverdale」で知られているニュージーランド出身のKJ・アパが演じる。
予告編では、メリッサとの恋、有名になった経緯、予期せぬ悲劇の中で耐え抜いた信仰がハイライトされている。
■ 映画「I Still Beleieve」予告編(英語)
■ 映画「I Still Beleive」公式サイト(英語)
2. I Am Patrick
俳優ジョン・リス・デイビスが、アイルランドの守護聖人となった聖パトリックを演じる作品。「聖パトリックの祝日」(3月17日)と翌日(18日)の2日間限定で公開される予定で、あまり知られていない聖パトリックの生涯を描く。リス・デイビスは「ロード・オブ・ザ・リング」で、ドワーフ族の戦士ギムリを演じたことで知られるベテラン俳優。シーン・T・オミーライとロバート・マコーマックも、聖パトリックの生涯の一部をそれぞれ演じる。
本作が光りを当てるのは、聖パトリックの人生と宣教。歴史的な記録、専門家へのインタビュー、そして聖パトリック自らが書き残した資料に基づいて物語が展開する。
■ 映画「I Am Patrick」予告編(英語)
■ 映画「I Am Patrick」公式ページ(英語)
3. Heavenquest
本作は、17世紀の英文学者ジョン・バニヤンの小説『天路歴程』を原作にした、キリスト教信仰に基づいたファンタジー・アドベンチャー。『天路歴程』は1678年に出版された後、これまでに200言語以上に翻訳され、今なお出版されている。その数世紀にわたって親しまれてきたキリスト教寓話が今回、映画として再構築される。
一方、本作は通常の500分の1という極小予算で製作され、スタッフも少数で、完全な台本もなかったという。製作総指揮を務めたダレン・ウィルソンは、クリスチャンポストの取材に次のように語った。
「過去数十年、ジャンルをつぶすようなドキュメンタリー映画を作ってきましたが、(監督の)マット・ビレンはいつも一歩一歩、共に歩んでくれました。だから彼が、『Heavenquest』みたいな風変わりなものをやることは、自分にとって驚くことではありません」
「作品について言えば、彼は私のほとんどのドキュメンタリー映画よりも低予算で撮影しており、映画作りを初めてやる者として既存のルールを全部ぶち壊しました。夜撮影しないこと、行くのが困難な場所をたくさん撮影場所にしないこと、台本なしで撮影しないこと、特殊効果が必要なファンタジー映画は撮らないこと。挙げればきりがない」
「しかし思うのですが、この映画を見た人々が分かるのは、この映画の源泉は心からの情熱だということです。芸術におけるルールを破る人たちは、大概それくらい世界でもまれなくらいユニークなアイデアを形にしないといけないから、仕方なくそうするのです。マットは間違いなくこの映画でそれをやりました」
「Heavenquest」は、1月28日から米動画配信サービス「VUDU(ヴドゥ)」で公開される。
■ 映画「Heavenquest」予告編(英語)
■ 映画「Heavenquest」公式サイト(英語)
4. Home Sweet Home
キリスト教ロマンティック・コメディー映画「Home Sweet Home」も今年公開だ。5x5プロダクションにより、ワシントン州スポケーンで撮影された。出演するナターシャ・ブレとベン・エリオットにとっては初主演映画となる。映画の中でブレ演じる色っぽいバリスタのビクトリアは、社交的なライフスタイルに飽きて本物を待ち望むが、それが何のことかさっぱり分からない。そんな折、彼女の働くカフェにエリオット演じるジェイソンが入ってくる。ビクトリアは魅力的に振る舞って見せるが、クリスチャンであるジェイソンは反応しない。こんなことが初めてのビクトリアにとってチャレンジが始まる。
ジェイソンが貧困者のための家を建てるミニストリーをしていることを探り当てた後、ビクトリアはそこでボランティアをすることに決める。そして、「どうやってクリスチャンのように振る舞うか」を研究するようになる。ビクトリアは新しいアプローチを取ることで一定の立場を築き、ジェイソンとの関係が前進していく。しかし、自分たちが建てている家のオーナーになるはずのシングルマザーと出会うことで、その目が開かれる。信仰しているふりのビクトリアは満たされることがなく、ジェイソンは他の人に仕えようとしているのに、彼女自身はただその邪魔をしているということに気が付いたのだった。
「Home Sweet Home」は今年春に公開される。
■ 映画「Home Sweet Home」予告編(英語)
■ 映画「Home Sweet Home」公式ページ(英語)
5. Don’t Say My Name
最後の映画「Don't Say My Name」は、誘拐犯による人身売買から逃れた女性の実話を基にした作品。あらすじには「われわれはアドリアーナの恐ろしい旅を追体験する。生き残り、回復への道を歩むまでのその体験を」とある。「Overcomer」に出演したキャメロン・アーネットが、米国土安全保障省の調査官を演じ、映画を通して背景にある人身売買の現実を世界に伝えようとする。
映画のクラウドファンディングのページによると、毎分2人の子どもたちが性的な人身売買によって取り引きされており、5分間ごとに10人が誘拐され、現代の奴隷になっているという。国連児童基金(ユニセフ)によると、毎年100万人の子どもたちが人身売買されている。
「Don't Say My Name」は、観客に人身売買を逃れた者に何が起きるのかを実体験を基に見せつける。映画のウェブサイトによると、「被害者のうち90パーセントは助け出されないと考えられている。家に帰ることができた10パーセントは、社会に再度復帰するためにもがく過程で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患ったり、うつになったり、自殺したりしてしまう。多くは援助からは程遠く、回復への希望はほとんどない」という。
監督のフェデリコ・セガーラと脚本家のパトリシア・ランドルフィ、プロデューサーのマーティー・ジーン・ルイスらを含む映画の製作者たちは、映画の信憑(しんぴょう)性を確実にするため、帰還者や警察、弁護士、判事のほか、さまざまな団体に取材したという。米国土安全保障省の調査担当部署もこの映画の監修に携わった。
「Don't Say My Name」は、人身売買防止のための団体、学校、企業などで人身売買についての認識を広めるために用いられる。公開は今年秋の予定。
■ 映画「Don’t Say My Name」予告編(英語)