中国最大規模の政府非公認教会の一つであった秋雨聖約教会(四川省成都)創設者の王怡(ワン・イー)牧師に対し、成都中級人民裁判所は30日、国家政権転覆扇動などの罪で懲役9年の判決を言い渡した。
約5千人の信徒がいた秋雨聖約教会は、「家の教会」や「地下教会」と呼ばれる政府非公認のキリスト教会の中でも最も大きな教会の一つ。昨年12月、大規模な取り締まりを受け、王牧師や妻の蒋蓉(ジャン・ロング)さんの他、信徒ら100人余りが拘束された。拘束された信徒の多くは数日から数カ月で釈放され、蒋さんも今年6月に釈放されていたが、王牧師は約1年間拘束された末、今回の判決が下された。
成都中級人民裁判所の発表(中国語)によると、王牧師は国家政権転覆扇動罪の他に「違法なビジネス活動」でも有罪となったが、その内容は明らかにされていない。また懲役9年の他に、3年間の政治的権利の剥奪、所有財産からの5万人民元(約78万円)の没収も命じられた。
秋雨聖約教会のための祈りを呼び掛けていたグループはフェイスブック(英語)に、「王怡牧師は福音を伝えたことで、たった今、懲役9年の判決を受けました」と投稿。迫害に関して書かれたものなど2つの聖句(マタイ5:11~12、コリント二4:11)を引用しつつ、「キリストにあるわれわれの兄弟(王牧師)の忠実な証しの故に、神に感謝します。今、天における彼の報いは大きいでしょう。多くの人々を主に導き、主の御名に栄光を帰すため、どうか王怡牧師の懲役刑を主が用いてくださいますように」と述べた。
王牧師は拘束される前、秋雨聖約教会に対し、自身が拘束された場合、48時間以内に公開するようにと書簡を託していた。
王牧師はその書簡で、「現共産党政権が一時的に支配することを神がお許しになっているという事実」を聖書に従い受け入れ、尊重すると言明。しかしその一方で「同時に私は、現共産主義体制による教会への迫害は極めて邪悪で違法な行為だと考えます。私はキリスト教会の牧師として、この邪悪さを断固非難します」と述べていた。
また、牧師になる前は成都大学で教鞭を執っていた法学者でもある王牧師は、「私が受けた召しの故に、私は非暴力的な方法で、聖書と神に反する人間の法律に抵抗しなければなりません。わが救い主キリストの故にも、私は喜んであらゆる犠牲を払い、邪悪な法律に抵抗します」とつづっていた。
今回の判決を受け、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」(英語)の中国に関する研究員であるパトリック・ポーン氏は、「本日の判決は、中国が支持するとしている信教の自由をあざ笑うものです。王怡氏は彼の宗教を実践し、中国の人権のために平和的に立ち上がっていたにすぎません」と批判。「懲役9年の判決は、極めて悪質で不当です。王怡氏は良心の囚人であり、直ちに無条件に釈放されるべきです」と求めた。
また、中国の迫害を監視している米キリスト教団体「チャイナエイド」のボブ・フー会長は、香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」(英語)に対し、懲役9年の判決は、非公認教会の指導者に対するここ数年の判決の中で最も重いと指摘し、次のように語った。
「(中国の)現政権は、王氏の国内、また海外に対する影響を本当に恐れているのだと思います。特に、彼が中国全土で導いていた改革派の福音的運動の影響力が増していたことを恐れているのだと思います」