ローマ教皇フランシスコはこのほど、「教皇機密」と呼ばれる高度な守秘義務の対象から、性的虐待に関わる事案を除外することを決めた。
教皇機密は、カノン法(カトリック教会の教会法) に従って定められた守秘義務で、外交や個人的問題、犯罪容疑など、教会の統治に関わる通常よりも機密性の高い情報を保護する目的で定められている。一方、性的虐待事件においては刑事訴追を妨害する一因になっていると批判する声も上がっていた。
バチカン(ローマ教皇庁)の発表(英語)によると、教皇機密の対象から除外されるのは、教皇が今年5月に発表した自発教令「ヴォス・エスティス・ルクス・ムンディ」の第1条と、教理省管轄下の「最も重大な犯罪に関する法規」の第6条に関する事案。
ヴォス・エスティス・ルクス・ムンディは、聖職者や修道者に対し性的虐待の通告を義務付ける教皇の使徒的書簡。第1条では、▽暴力・脅迫・権威の悪用による性的行為の強要、▽未成年者および弱い立場にある人々との性的行為、▽児童ポルノに関する一切の行為、▽司教や修道会長による虐待加害者に対する告発義務の怠慢および隠ぺい――が言及されている。
「最も重大な犯罪に関する法規」の第6条は、▽未成年者との十戒の第6戒「姦淫(かんいん)してはならない」に違反する行為(1項1節)、▽未成年者ポルノの入手・所持・頒布(1項2節)――を聖職者による「最も重大な犯罪」として定めている。
同法規は、先々代の教皇ヨハネ・パウロ2世が2001年に発表した自発教令「サクラメントールム・サンクティタティス・トゥテーラ」と、先代の教皇ベネディクト16世が2010年に行った改訂に基づいて定められている。このうち対象となる未成年者はこれまで、1項1節の行為については「18歳未満」だったが、1項2節では「14歳未満」としていた。しかし、バチカンの発表(英語)によると、教皇フランシスコは今回、サクラメントールム・サンクティタティス・トゥテーラを改訂し、1項2節についても対象となる未成年者を「18歳未満」にまで引き上げた。
この他、これらの重大な犯罪の審議において、「弁護士および検察官」の役はこれまで司祭のみが担えたが、今後は、カノン法の博士号所持者であれば、信徒でも担えるようになった。