ケニア北部で6日夕、長距離バスが武装集団に襲われ、少なくとも9人が死亡するテロ事件が発生した。武装集団はバスの乗客のうち、イスラム教の信仰告白「シャハーダ」を唱えられなかった人々を選び出して殺害したという。他に乗客2人の行方が分かっておらず、殺害された可能性もある。ソマリア南部を中心に活動するイスラム過激派組織「アルシャバブ」が事件への関与を認めている。
キリスト教徒への迫害を監視する「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)や「モーニング・スター・ニュース」(MSN、英語)によると、事件は6日午後5時半ごろ、同国北部ワジル郡で発生した。現場は、北東に隣接するマンデラ郡との郡境近く。バスは同国南部に位置する首都ナイロビから、ソマリアとの国境に隣接する北部の都市マンデラに向かっていた。
ICCが信頼できる情報筋の話として伝えたところによると、武装集団は、乗客のうちシャハーダを唱えられなかった人々を選び出し、バスの外で至近距離から射殺したという。
MSNによると、バスには56人が乗車していた。事件が起こった地域は、ソマリア系の住民が多く居住している。存命者の男性がMSNに語ったところによると、キリスト教徒と見なされたとみられる11人はバスの外に出され、現地に住むソマリア系のイスラム教徒と見なされた人々はバスの中に戻された。
「イスラム教徒の男性の一人が私にソマリアの民俗衣装をくれました。『仕分け』が終わったとき、私はイスラム教徒の側におり、私たちはすぐにバスに乗り込むよう言われました。現地人(と見なされれた人々)はバスに戻り、残された現地人ではない(と見なされた)人々は銃で撃たれました」
MSNによると、犠牲者のうち2人は、福音派の信仰を持つ教師だったという。ケニア北部にある教会の関係者はMSNに、「私たちの教会に通っていた教師2人を失いました」と語った。また犠牲者の別の1人はアフリカ内陸教会に所属する医師で、3人はカトリック信徒だったという。他の5人については9日時点で宗教的な背景は不明だとしている。
カタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」(英語)によると、アルシャバブは事件への関与を表明し、殺害した人の中には「大統領警護関係者や政府関係者」がいたと主張している。
一方、犠牲者に関する情報は錯綜しており、ケニア大統領府が7日に発表した声明(英語)では、警官を含む8人が死亡したとされている。またAFP通信が同日、現地警察幹部の話として伝えたところによると、死者は合計10人で、その内7人が警官、1人が医者だとしている。
日本の公安調査庁によると、アルシャバブは2007年、反政府連合組織「イスラム法廷連合」(UIC)から離脱する形で設立された。イスラム国家の樹立、ソマリア政府の打倒、外国軍部隊の排除を目的として活動している。「アルカイダ」に忠誠を誓うイスラム教スンニ派の過激組織で、ソマリアだけでなく、隣国ケニアでも散発的にテロを行っているという。