日本キリスト教異端相談所所長の張清益(チャン・チョンイク)牧師が、自身が牧会する単立とねりキリスト教会(東京都足立区)の信徒らに暴行を加えていたとされる問題で、張牧師から日常的にパワハラを受けていたと訴えていた元教会スタッフの村上厚朗さんが、その詳細を明らかにした。一方、張牧師は本紙が問題を報道した後、韓国メディアに一時期、反論する寄稿を掲載。しかしその中でも、女性信徒に対しては「制裁」を加えたと述べ、教会まで警察が出動したことがあったことを自ら明らかにしていた。
ヒアリング出席者を開示せず、報道を「真っ赤な嘘」と断定
村上さんが今回、被害の詳細を明らかにしたのは、張牧師が代表を務める「異端カルト110番」(以下、110番)の対応に強い不信感を抱いたため。110番は本紙報道後、首都圏近郊のアドバイザーらによる調査を行うと発表。村上さんは21日、調査の一環で110番からヒアリングを受ける予定だった。しかし、ヒアリング出席者の開示を複数回求めても応じてもらえず、また110番編集長の中橋祐貴氏は、張牧師の報道を「オール嘘(うそ)」「ビビるくらいの真っ赤な嘘」と断定したまま、撤回や謝罪もしないでいた。さらに、110番賛同人の根田祥一氏は、村上さんを本紙の関係者と決めつけるような姿勢を示していたため、村上さんは「中立性が担保されていない」と判断。ヒアリングの欠席を決め、被害の詳細を「経緯説明書」としてまとめ、110番に関係する団体や個人、本紙を含む幾つかのキリスト教メディアに送付した。
本紙が張牧師の問題を最初に報じた10月2日は、110番の開設記念礼拝が行われる前日だった。村上さんは経緯説明書で、110番の開設を知ったいきさつを説明。このような働きは必要だと考える一方、異端問題の専門家や牧師たちが「張牧師の実態を知らないで協力するなら、その先生方の業績や信用にもご迷惑がかかるし、また、神様の働きを妨げることになると考え」たと、告発した理由を述べている。
携帯電話を投げ付けられる
村上さんは10月2日の本紙記事で、張牧師から携帯電話を投げ付けられたと告発していたが、経緯説明書によると、それは2017年秋、日曜学校の遠足があった日の朝だった。遠足のため、菓子類の買い出しに出掛けたところ、張牧師から電話があり、急いで買い出しを済ませ教会に戻った。しかし戻ってみると、張牧師は「なぜお菓子を買ってきたのか!」と怒り出したという。村上さんは、張牧師が電話で「急いで戻ってこい」と言ったと聞こえたが、張牧師は「買わないで戻ってこい」と話したと主張。村上さんの聞き間違えだった可能性もあるが、張牧師はこれをひどく怒り、牧師室で自身の携帯電話を村上さんの方に向かって、床にたたきつけるように強く投げたという。さらに張牧師は遠足に随伴する予定だったが、その日は結局、怒りのあまり遠足にも行かなかった。
教会内で殴られる
また同じく17年秋のある日の夜には、教会内で2人しかいない状況の中、殴られたこともあった。教会の前には、道路を挟んですぐ向かいに、教会関係者が経営する韓国料理店があった。村上さんがその店で教会関係者らと食事を楽しんでいると、張牧師が村上さんを教会に呼び出した。村上さんは翌朝の早天祈祷会でメッセージを伝える担当だったが、張牧師はそのことを指摘しながらひどく怒り、村上さんの顔を数発殴ったという。当時、店にいた教会関係者らは飲酒もしており、張牧師は、メッセージの用意をせずに村上さんが飲酒をしていたと勘違いしたのではないかと、村上さんは考えている。
運転中の電話を強要される
本紙既報の速度超過運転や運転中の電話使用についても、村上さんは経緯説明書で幾つかの場面を例に挙げながら説明した。超教派の祈祷院「日光オリーブの里」へ行ったときには、一部の信徒が怖がるほどのスピードを出していた。送迎のため空港に向かったときには、張牧師の車が速すぎてついていけなくなると、張牧師は運転中にもかかわらず電話をかけてき、さらに電話に出ないと、後で怒鳴りつけてきた。張牧師の知人を一人で空港まで送ったときも、朝の出勤ラッシュで時間がかかったことや、運転中は携帯電話の電源を切っていたことを説明したが、「スピードを出さないから時間がかかる」「運転中でもいつでも電話を取れるようにしておかないとは、やる気があるのか」などと怒鳴りつけられたという。
2人の女性信徒に対する暴行
村上さんはさらに、張牧師から暴行を受けたという女性信徒2人についても言及した。それによると、一人は2017年12月上旬の礼拝後、教会の外にいたところを、裏口から出てきた張牧師に倒され、蹴られるなどした。その日は礼拝中、普段後ろの席に座っていた女性に対し、前の席に座るよう張牧師が指示。しかし女性は、過去のトラウマのため後ろの席に座る習慣があり、張牧師の指示を拒む場面があったという。この日は、女性が張牧師に蹴られたことで、救急車の要請も行われた。女性はその後、張牧師によるさらなる暴力を恐れ、外出するのも怖くなり、自宅には防犯カメラを何台も増設したという。
また別の女性は、他の信徒たちもいる食事の時間帯に、張牧師から無理やり手を引っ張られ、スタッフルームに引き込まれたことがあった(下に画像と動画あり)。女性はその際、悲鳴を上げるほどだった。さらに張牧師は後日、教会前でその女性から携帯電話を奪い取り破壊した上で、暴行を加えたという。
村上さんはこの他、礼拝後のスタッフミーティングで、たびたび暴言を浴びせられたことや、約1年で教会スタッフを辞めさせられた際、教会の献金を横領したことにされ、最後の2カ月分の給料をいまだに受け取っていないことなども説明した。
公正中立な第三者調査が必要、法的手段採ることは適切
この問題について、内田圭一氏(日本ハリストス正教会司祭)は、「カルト問題について相談を受ける立場の人が、暴行やパワハラを行っていたということが事実であれば由々しきことです。公正中立な第三者によって十分な調査がなされるべき」と言う。また「教会内で起こった問題であっても、自分たちで解決することができない事柄ならば、この世の裁判に訴えることは適切です。パウロ自身、ローマ皇帝に上訴しています。村上さんによる問題提起には、当事者同士の納得では済まされない事柄もあり、法的な手段を採ることを躊躇(ちゅうちょ)する必要はないと思います」と語った。
虐待などの問題に社会福祉の観点から提言し、さまざまな活動を行っている千葉敦志氏(日本基督教団正教師)は、次のように語った。
「事実であれば、深刻な問題だといえるでしょう。教会でもよく、パワハラやモラハラ、またセクハラの問題を耳にしますが、これらのハラスメントは、広義の虐待と捉えてもよい問題です。そして、『異端』や『カルト』だと指摘される場合、多くはこうしたハラスメントが問題の発端となっているのが実情だろうと思います。この場合、教会の『閉鎖性』を利用してさまざまなハラスメントを行うことが多いからです。
現在の組織運営(ガバナンス)にあっては、絶えず部外者の目を意識した『透明性』を担保することが求められており、さらにそれを裏付ける自らの『特例性』(コンプライアンス)をしっかりと周知する作業を徹底してきたかどうかが、運営者の責務として大前提に挙げられます。『異端カルト110番』を自認する以上、これらコンプライアンスとガバナンスは必須のはずです。それなくしては、仮に被害者が救済されたとしても、反射的にトラウマなどを誘発する危険性が飛躍的に高くなり、『ミイラ取りがミイラになった』と断じられても申し開きできないことになります」
張牧師の所属宣教会も調査
張氏の所属教団である大韓イエス教長老会(合同)の世界宣教会(GMS)が最近、韓国クリスチャントゥデイに明らかにしたところによると、GMSも現在、張牧師と被害者双方から見解を聞きつつ、必要であれば調査員を日本にまで派遣することも視野に調査を進めている。