エジプトでイスラム教からキリスト教に改宗した男性が、家族から殺害される事件があった。男性は、自身が改宗したことを示す複数枚の写真をフェイスブックに投稿していた。米国に拠点を置く迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)が9日、明らかにした。
ICCによると、殺害されたのはフセイン・ムハンマドさん。年齢は公表されていないが、日曜日の6日、キリスト教に改宗したことを理由に、家族によって殺害されたという。
「ジョージ」という洗礼名を授けられていたムハンマドさんは、自身のフェイスブックに、手首に十字架のタトゥーを入れた写真などを投稿していた。十字架のタトゥーを入れることは、エジプトのコプト正教会の信者間ではよく行われる行為だという。
ムハンマドさんの家族は、フェイスブックへの投稿前から改宗を知っており、おじは治安当局に通報するなどしていた。そんな中、ムハンマドさんがフェイスブックに写真を投稿し、改宗が家族外にも知られるようになったことで、イスラム教徒の家族が自分たちの名誉を守るため、殺害に及んだとみられる。
エジプトはイスラム教を国教としており、人口の約9割がイスラム教徒。一方、キリスト教徒も人口の約1割を占め、中東で最もキリスト教徒が多い国となっている。エジプトのキリスト教徒の多くはコプト正教会の信者で、同教会は度々、イスラム過激派の標的にされている。
ICCによると、エジプトのキリスト教徒は「2級市民」とみなされ、さまざまな面で制約を受けることが多いという。またキリスト教への改宗者は、イスラム社会からは「棄教者」として非常に厳しい目で見られ、今回の事件のように命を奪われる場合もあるという。