一月四日(木曜)
応接間は聖霊に満たされた雰囲気でした。お菓子を食べながらお茶を一杯だけ頂いて、祈りの場所を見せて戴いて帰ろうと思って、お菓子を用意して行きましたが、Fさんとの面接は仕切り越しで、隔てられているその仕切りの上に、一つだけ、ティーカップとケーキが、ただ私だけのために置かれていました。予め言われてはいたのですが、深閑として寒く、この中に十五人もの人がいるとは思えない静かさです。シスターFは余り語る事もなく、私も聴く事がはばかられたので、結局、私ひとりが遠慮無くお茶を飲みケーキを食べ、一方的にお喋りして帰る事になりました。ただ、寒いですよと言うだけで、Fさんの顔は明るくて、幸せそうでした。他のシスターに案内されて、願いの如く、礼拝堂で祈り、ひっそりと修道院の戸を閉めて外に出た時、私はシスターFが、すべてを捨て、世から隔てられる、この一生を選んだ道を知る思いでした。ーー先日、イタリヤのアッシジに教会を訪ね、聖クララ(シスターFさんの聖クララ修道会の創始者)の遺体が安置してある姿を見て来ました。そのお顔は印象に残る程厳かなものでした。このアッシジに来る事を羨ましいと言われたシスターFは、カトリックの修道女として、きっとこの四十数年、この聖女クララの取りなしを求めて、心の底から祈られた事でしよう。聖フランチェスコは青年時代やくざな人でしたが、ある日突然、主の臨在の奇跡が起こり、驚き、かつ変えられました。聖クララは彼の最も良い友人となり、二人は力を合わせて、全世界に清貧を旨とするフランシシコ派修道院を造りあげて行きました。この様に、たった一人、二人の信仰と、その交わりが如何に尊いものであるかを思わずにおれません。主の御名が崇められます様に。Fシスターに、主の愛が、ある時には静かに、またある時には降り注ぐ雨の様にあります様に。私は、修道院ではなくて、世にあって神を愛します。――帰り道、ふとエミー・カーマイケルの詩を思い出しました、「私達の夜には、星が輝き、花が慰めを与え、其処には悦びがあります。けれどもキリストには、星もなく、花もなく、歌もなく、ただ暗黒のみが続きました。」
一月十四日(日曜)炬燵の中で(啓子)
暮れから体の調子が良くなくて、お正月は寝たり起きたり、炬燵に入ってテレビを見ていましたら、浅草山谷でホームレスの人達のため、働かれる森本春子先生の姿が映って来ました。それは、お酒を飲んで道路に寝ている青空住人を相手にして、大声を上げ、時にはほっぺたを叩きながら、「しっかりしなさい、ハレルヤ!」と福音を伝える姿でした。恐くないのかしらと思いますが、神ともにいますの確信をもって勝利する姿は感動的です。私より六つも年上の方でした。「クリスチャンは年を取らない、」と言うのは本当です。神様が用いて下さるからでしようか。
著者:仲嶋正一
【所属教会】日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団 港南シオンキリスト教会(野川悦子牧師)
【略歴】
日本キリスト教団東京天城教会(松本頼仁牧師)にて受洗(1949)
旧制浦和高校理科卒業 (1949)
進駐軍総司令部民事検閲部翻訳 (1949)
東京大学医学部薬学科卒業 (1953)
エイザイ研究所初代研究員
米国コロンビア大学客員研究員 Research Associate (1966ー1969)
星薬科大学及び大学院薬化学教授 (1970−1995)
同大評議員・日本薬学会関東支部幹事・日本植物園協会評議員 等
現在 同大学大学院名誉教授 薬学博士 (東京大学)
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み神を慕いて:仲嶋 正一(著), 仲嶋 啓子(著) 単行本 (2002/07) 文芸社
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