SNS上で「信仰を失いつつある」と明かし、一部で「棄教」したと捉えられるなど、関心が集まっていた人気クリスチャンバンド「ヒルソング・ユナイテッド」のマーティー・サンプソン氏(40)が、自身の信仰について「大揺れの土台の上にある」と話す一方、「信仰を捨てたとは言わない」と述べ、放棄については否定した。
16歳の頃からシドニーのメガチャーチ「ヒルソング教会」のワーシップチームで活動してきたサンプソン氏は10日、自身のインスタグラムに「本当に自分の信仰を失いつつある」「キリスト教は私にとって単なる他の宗教のようだ」などと投稿していた(関連記事:ヒルソングのワーシップリーダーがSNSに「信仰を失いつつある」と投稿 初期メンバーで作詞曲多数)。その約2週間前には、ベストセラー『聖書が教える恋愛講座』の著者で、米メリーランド州のメガチャーチ元主任牧師であるジョシュア・ハリス氏が、「私はクリスチャンではありません」と表明していたこともあり、大きな注目を集めた。
このサンプソン氏の告白を受け、クリスチャンポストの寄稿者であるマイケル・ブラウン氏は12日、「信仰を捨てようとしているヒルソングのリーダーに手を差し伸べて」(英語)と題した寄稿を掲載した。その後、これを読んだサンプソン氏本人が、寄稿への応答としてコメントを書き込み、自身の信仰が大きく揺れていることは認めつつも、棄教は否定した。
ブラウン氏は寄稿で、サンプソン氏が10日の告白で投げ掛けたキリスト教に対する疑問に反論。その上で、サンプソン氏が「心の誠実さと熱意、謙虚さを持ち、熱心に真理を探求するよう」祈るとともに、「(キリスト教に)懐疑的な人たちが疑問について話し合えるよう」祈るとつづっていた。
これに対しサンプソン氏は、自分が抱く疑問に対する答えを心から求めていると強調する一方、「(キリスト教の)信仰体系は多くの点で一般社会の道徳性と一貫しないように見える」とし、そうしたことと「葛藤」の最中にあると語った。
「大抵の人は選択できるのであれば、この世からがんや病気などの悩みの種をなくすと思います。でも、神はなぜそうしないのでしょうか。確かにこの問いには答えがありますが、典型的なクリスチャン生活の大半は、こうしたことを考えることに費やされることはありません」とサンプソン氏。「こうした疑問は解消されぬまま残っています」と言う。
その上でサンプソン氏は、「自分の信仰を捨てたとは言わないですが、それは大揺れの土台の上にあります」と述べ、自身の信仰が非常に不安定な状況にあることを明かした。
「これまでも、著名なキリスト教弁証論者や聖書学者の議論を分析してきましたし、無神論者や他宗教の論客の議論に対しても聞く耳を持ってきました。真理というものがあるのなら、私の理解のいかんにかかわらず、真理は真理のまま残ることになります。私がその真理を見いだすなら、それは真理としてさらにはっきりとするはずです。ダイヤモンドをより詳しく調べることで、その品質が明らかになる(のと同じように)。私は命ある者として、今も学んでいます」
一方、サンプソン氏はヒルソング教会の古参メンバーだが、こうした考えはあくまでも自分自身のものであり、いずれの教会を代表するものではないと強調。自身の経験に照らし合わせれば、「ヒルソング教会は健全なペンテコステ派の教義と思えるものを教えてきました」と述べている。
サンプソン氏は10日の投稿で、キリスト教に対して次のような疑問を投げ掛け、「本当の真理が欲しい」と求めていた。
「一体どれだけの説教者たちが倒れた? たくさんだ。誰もそれを語らない。どれだけの奇跡が起こった? そんなに多くはない。誰もそれを語らない。なぜ、聖書は矛盾で満ちている? 誰もそれを語らない。なぜ神は40億人もの人を一つの所に送るのに、依然として愛だといえるのか。それはすべて、彼らが信じないから? 誰もそれを語らない」
「私は、もうその中(クリスチャンの世界)にはいない。私は本当の真理が欲しい。『ただそれを信じます』という類いの真理ではなく。科学はすべての宗教の真理を鋭く刺し続けている。一つの神だけではなく、多くの事柄が人々の生活に変化を与えることに役立っている。言うことはもっとたくさんあるが、私にとってこれがリアルだ。(中略)私の知っていることが、今この時の私にとって真理で、この時点においてキリスト教は私にとって単なる他の宗教のようだ」
これに対しブラウン氏は寄稿で、ハリス氏の「棄教」騒ぎや、キリスト教指導者たちのスキャンダルを伝える多くの記事があることに言及。さらに、イエスの名によって行われた数々の奇跡を記録した書籍が出版されていることや、聖書の中に見られる矛盾については誰もが一度は疑問に思ったことがあるもので、多くの聖書研究はそうした疑問に対するものであることなどを挙げ、これらについて「誰もそれを語らない」と言うサンプソン氏の主張に異議を唱えた。しかし同時に、サンプソン氏を次のように励ましもした。
「自分の疑問を正直に尋ねることを恐れてはいけません。そうすることが真理(の発見)につながるからです」
「私は過去47年余りにわたり、そうしてきました。信者になりたての頃から、ラビ(ユダヤ教の指導者)たちに問い詰められたときにも、そうしました。また、この世の教育機関でさまざまな学術研究を行う中でも、そうしてきました。その結果、私は心と思いを尽くして主を愛するようになりました。主は真実の神であり、御言葉は真実です」
「だから、正直に質問することや、真理が導くままに従うことを恐れないでください。表面的に真理を求めるのではなく、何よりもまず神を求めてください。それから、サンプソン氏が悔い改めて、信仰が回復するように祈りましょう」