第2次世界大戦中の1944年6月6日に決行されたノルマンディー上陸作戦。200万人近い兵士が、ドーバー海峡を渡ってフランスのノルマンディー海岸に上陸した史上最大規模の上陸作戦であり、同大戦における転機となった戦いだ。6月6日は「Dデー」と呼ばれ、作戦は夜間の落下傘部隊の降下から始まった。
その落下傘部隊に無線通信士として所属し、75年前にいち早く上陸した救世軍中将のハリー・リードさん(95)が5日、命を落とした戦友らを追悼してスカイダイビングを行った。リードさんのスカイダイビングは、同作戦75周年を記念するイベントの一環として、英軍落下傘部隊「レッドデビル」と共に行われた。
当時20歳だったリードさんは、75年前の6月6日午前0時50分きっかりに落下傘降下し、わずか30秒後にノルマンディーのサンヌビル(現スナン)に着陸した。昨年の記念ツアーで戦場跡地を訪れた際、再び現地で落下傘降下する思いが与えられたという。
「私の心臓は中年男性と同じくらい健康だと、担当医から太鼓判を押されました。年齢のいかんにかかわらず、人は自分の限界を超えていると感じることから身を引いてしまいがちです。しかし私は、チャレンジを怠ってはいけないと信じています」
ナチス・ドイツからフランスを解放した勇気をたたえ、リードさんは2016年、フランスの最高勲章「レジオン・ドヌール勲章」を授与された。
一方、救世軍の終身会員であるリードさんは、英国と東オーストラリアの両軍国(管区)で奉仕し、カナダでは万国書記官を務めた経歴を持つ。
6日のスカイダイビングは、救世軍の活動を支援する慈善活動(英語)として行われ、12日までに約2万ポンド(約280万円)の寄付が集まった。この寄付は、救世軍が行っている現代の奴隷制度の犠牲者を支援する活動に充てられるという。
スカイダイビング前にPA通信の取材に応じたリードさんは、次のように語っていた。
「私はスカイダイビングを楽しむつもりです。スカイダイビングには、リアルで明確な快感があります。多少きわどいかもしれませんが、積極的にやってみます。しかし、心の中では戦友について考えることになるでしょう。彼らのことを思うと私はとても感動するのです。私は可能な限り充実した人生を生きることができました。しかし、戦友たちはそうではありませんでした。私は彼らの墓の前に立ちますが、語る言葉もなく涙することになるでしょう」