ホームスクーリング(自宅教育)が盛んな米国で、各州政府による圧力の形が大きく変化する一方、ホームスクーリング自体の宗教的性質にも変化が生じている。
「若い地球説」(世界が6日間で創造されたとする説)を推進するキリスト教団体「国際創造協会」(IAC)の創設者で、副代表を務めるスティーブン・クレイグ・ポリカストロ氏はクリスチャンポストに対し、ホームスクーリングに対する各州政府主導の圧力が近年、大きく変化していると語った。これまではホームスクーリングそのものを禁止しようとする動きだったが、最近は「極度に抑圧的な」規制に移行しつつあるという。
「在宅教育に反対する人々は、ホームスクーリングを違法とすることはできないと認識しています。そのため、親が主導する在宅教育に過重な規制を課すことで、ホームスクーリングを困難にしたり、不可能にしようとしています」
「また、全米の学区がホームスクーリングを行う保護者や生徒に対し、法律で義務付けられていないさまざまな事柄を絶え間なく要求してくる事例もあります。学区が法律を正しく理解していない場合もありますが、教育委員会の指導者が法律を無視して、規則を押し付けようとするケースもあります」
IACは今月23日、毎年恒例の「全米ホームスクール・デー」大会を開催する。さまざまな地域の講演者が、ホームスクーリングや家庭教育用教材をテーマに、インターネットのライブ放送で世界中の聴衆に語る予定だ。
ポリカストロ氏は、ホームスクーリングに対する規制の問題に触れ、州議会に提出される法案を監視し、学区との良好なコミュニケーションを維持する上で、州単位の組織やホームスクール法律擁護協会(HSLDA)の重要性を指摘した。
「州政府に対するこういった監視は絶え間のない戦いです。それは、保護者主導の教育を非合法化することから、保護者の権利を断続的に危険にさらすことに姿を変えたにすぎません。これは規制が絶え間なく変化していることによるものです」
「『自由の代価は永遠の寝ずの番である』というトーマス・ジェファーソンの有名な言葉は、まさに的を射ています。教育の自由と親の権利を信じる私たちは、皆この言葉を実践しているからです。私たちは神から与えられた子どもたちを訓練する権利が、官僚や議会に妨げられないよう警戒しているのです」
規制に関する最近の事例はアイオワ州に見られる。民主党のメアリー・マッシャー同州下院議員は今月初め、同州下院第272号法案(英語)を提出した。この法案が可決された場合、学区はホームスクーリングを受けている子どもたちを対象に「健康と安全のための家庭訪問」を実施することになる。
ミシガン州に拠点を置くキリスト教団体「ファミリー・リニューアル」の代表で、今年の「全米ホームスクール・デー」の講演者でもあるイスラエル・ウェイン氏も、規制強化の動きはホームスクーリングに対する執拗な脅威だと見ている。ウェイン氏は同州のキリスト教ホームスクーリング支援組織「ミシガン・キリスト教ホームスクールネットワーク」の理事も務めている。
ウェイン氏はクリスチャンポストに、「ほぼ毎年、ほとんどすべての州議会においてさまざまな教育関連の委員会に法案が提出され、すべてのホームスクール教師に対して規制を強化しようとしています」と語った。
「この規則は学業成績を向上させるものではまったくなく、生徒のために最善を尽くしているホームスクーリングの保護者に対して、不必要に煩雑でややこしいお役所仕事を生み出すことにしか役立っていません」
米国ではこの十数年でホームスクーリングが大幅に成長した。全米教育統計センター(NCES)の報告(英語)によると、5〜17歳の子どものうち、ホームスクーリングで教育を受けている子どもの割合は、1999年には1・7パーセントだったのが、2016年には3・3パーセントとほぼ倍増した。
NCESによると、16年にホームスクーリングが行われた最大の理由は「安全性や麻薬の問題、または否定的集団心理(否定的な事柄に関して周囲に迎合しなければならないと感じさせる圧力)などの学校環境に対する懸念」で、ホームスクーリングを行った保護者のうち34パーセントがこの理由を挙げた。次の理由としては「学校の学業指導に対する不満」が多く、17パーセントだった。
一方、「宗教的指導のため」は16パーセントで、03年の29・8パーセントに比べると大幅に減少した。
米パシフィック・スタンダード誌は昨年の記事(英語)で、「今日のホームスクール支持者は保守的なクリスチャンではない」とし、ホームスクーリング運動が以前ほど宗教的ではなくなってきているという見解を示している。
ホームスクーリング運動が多様化する一方で、宗教的な観点で見ると、ホームスクーリングをする親の3分の2以上がクリスチャンだとポリカストロ氏は指摘する。
ウェイン氏も、現代の保護者がホームスクーリングを選択する動機の大半は世俗的なものであることを認めつつ、実情はもっと複雑だと言う。
「時間の経過とともに、この分野で変化が起きていることが分かると思います。しかし、世俗的なホームスクーリングが、以前のクリスチャン中心のホームスクーリングに取って代わると憶測すべきではないと私は考えます」
「宗教的な理由でホームスクーリングをしているクリスチャン家庭は、ますます減少していると思います。彼らはクリスチャンかもしれませんが、子どもの安全や成績の悪さ、特殊なニーズなどが動機となっており、聖書的な理由によるものではないのです」