世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事(ノルウェー教会牧師)は30日、ロシア正教会のトップであるモスクワ総主教キリルの元を訪問し会談を行った。キリル総主教は会談で、最近のウクライナ正教会に関わる情勢について懸念を表明。それに対しトヴィエト氏は、WCCが教会や教団・教派内の問題に介入することはないとしつつも、「正教会間の分裂に関しては、和解と癒やしを祈っています」と語った。WCCが同日、公式サイトで伝えた。
トヴェイト氏の訪問は、キリル総主教の就任10周年記念式典出席によるもの。トヴェイト氏は会談で、エキュメニカル運動やWCCの働きにロシア正教会が参与していることの重要性を強調。キリル総主教も、ロシア正教会が今後もWCCに関わることを再確認し、冷戦時代にWCCが果たした独自の歴史的役割を評価した。
一方、キリル総主教は、ウクライナの宗教的自由の現状と教会問題への国家の関与について深い懸念を示した。また、新たに設立されたウクライナ正教会が今年初め、コンスタンディヌーポリ総主教から独立を認められたことを受け、世界の正教会の間で緊張が高まっていることへの懸念を表明した。ウクライナには、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会も別に存在する。
これに対しトヴェイト氏は、「WCCが教会や教団・教派内の問題に介入することはありません。しかし正教会間の分裂に関しては、和解と癒やしを祈っています」と述べた。また、2021年に開催されるWCCの次期総会のテーマである「キリストの愛が世界を和解と一致へ」に言及。分裂と分極化が進むこの世界において、和解と一致はキリスト者にとってどんな意味を持つのかを問うこの総会テーマに、ロシア正教会も貢献するよう呼び掛けた。その上で「互いに愛し合うことこそ、今日の世界で和解と一致に至る道であり、平和のビジョンを維持する道なのです」と述べた。
キリル総主教は2009年2月1日、前総主教アレクシイ2世の死去に伴い、ロシア正教会のトップであるモスクワ総主教に就任した。WCCとの関わりは非常に長く、1968年から98年まで、中央委員会や執行委員会の委員など、さまざまな役職を積極的に担ってきた。また71年から74年までは、スイス・ジュネーブにあるWCC本部でモスクワ総主教庁の代表者を務めた。