会堂の売却を迫られていた米シカゴの教会が、競売にかけられる直前に匿名の団体からの約200万ドル(約2億2500万円)の献金を受け、難を逃れるという出来事があった。
この「奇跡」を経験したのは、シカゴにある聖トリニティー・ギリシャ正教会。同教会は約800万ドル(約9億円)の負債を抱えており、担保として会堂を銀行に差し押さえられていた。
14日には会堂が競売にかけられる予定だったが、その前日の深夜、約200万ドルを献金するとの電話があった。匿名の団体からの申し出で、会堂の買い戻しを手助けしたいとのことだった。
同教会の小教区会議会長を務めるスタンレー・アンドリーキス氏は16日、AP通信(英語)の取材に、献金は「クリスマスの奇跡」だったと述べた。
「私たちは、まるで子どものような気持ちです。クリスマスの朝に目を覚ましてみると、プレゼントがあったのです。『これで教会を続けられる』という感じです」
アンドリーキス氏によると、200万ドルは競売を中止し、会堂を守るには十分な金額だという。
一方、同教会のニコラス・ジョナス主任司祭は16日、フェイスブックへの投稿(英語)で、競売が中止になったことを明らかにし、献金は助けになったとしたが「(教会が)難を逃れたわけではありません」とコメント。「気を緩めてはなりません」と警鐘を鳴らした。
「何よりも重要なことは、今もすべてのことが100パーセント銀行次第だということです。献金があったことは確かですが、銀行の対応が現実的で共感をもたらすものになるか否かは銀行次第です」
「今、私たちが喜べるのは、時間的な猶予が与えられたことだけです。教会のために熱心に祈り続けなければなりません」
約120年の歴史を持つ同教会だが、近年は逆境にさらされている。周辺地域の人口動態に変化が生じ、信徒の数や奉神礼(礼拝)への出席者が減少しているという。
問題の原因は他にもある。同教会と同教会が創設した「ギリシャ正教米国アカデミー」(旧ソクラテス・スクール)との間に訴訟問題が生じたことだ。
シカゴ府主教区のトップであるナタナエル・シメオニデス府主教は11月末、声明(英語)を発表し、府主教区として渦中にある同教会への支援に尽力すると述べた。
「この事案については、シカゴ府主教区が長年にわたり聖トリニティー・ギリシャ正教会に協力しています。私は新任の府主教として、大主教区の規定の下に特別対策委員会を立ち上げ、先ごろ渦中に置かれた同教会のために最善の策を講じています」
聖トリニティー・ギリシャ正教会は、米国に移民してきたギリシャや他の国々の正教会の信者によってつくられた在米国ギリシャ正教会に属する。在米国ギリシャ正教会は現在、コンスタンディヌーポリ総主教庁の下にある大主教区という位置付けで、シカゴ府主教区を含む計8つの府主教区で構成されている。