世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会と、WCRP韓国委員会に相当する韓国宗教人平和会議(KCRP)は10月23〜25日、北海道で「日韓宗教指導者交流プログラム」を行った。洞爺湖や札幌、小樽などを訪れ、各地の宗教施設などを訪問。25日には、日本聖公会札幌キリスト教会でシンポジウムを開催し、韓国側からは代表団の7人が、日本側からはWCRP日本委理事長の植松誠氏(日本聖公会首座主教)のほか、地元北海道の宗教者ら約130人が参加した。
同プログラムは、日韓両国の宗教指導者が互いの国を訪問しながら交流を行い、民間レベルでの信頼を醸成し、平和のための連帯を促進することを目的としている。2016年に第1回が韓国で開催され、第2回となる今回は日本で開催された。
シンポジウムの冒頭、あいさつに立った植松氏は、北海道には朝鮮半島や中国から人々が強制連行されてきた歴史があることに触れ、「そのような歴史を一緒に学びながら、日韓の宗教指導者たちがどういう平和への動きを共にしていくことができるのか。そのことをお互いに学び合う機会を与えられたことを心から感謝しています」と語った。また、韓国の仏教系新宗教「円仏教」評議員でKCRP事務総長のキム・テソン氏は、シンポジウムの基調講演者で、北海道で強制労働の末、死亡した日本人や朝鮮人の遺骨返還運動を行っている殿平(とのひら)善彦氏(浄土真宗本願寺派・一乗寺=北海道深川市)の活動について触れ、その献身的な働きに謝意を示した。
殿平氏は基調講演で、「歴史の真実を見つめることで、被害と加害の歴史を超えた友情が芽生えている」と述べ、日韓の若者が共同で取り組む意義を強調。現在抱える課題としては、まだ返還できていない北朝鮮出身者の遺骨14体があることを挙げ、「来たるべき時期に、必ず北朝鮮に奉還したい」と語った。
パネルディスカッションでは、韓国側からは、いずれもKCRPの中央委員であるキム・テヒョン氏(韓国キリスト教教会協議会〔NCCK〕教会一致委員会局長)、ヤン・ドクチャン氏(韓国カトリック司教協議会全国委員会部長)、チョン・ジョンスク氏(天道教社会文化館館長)が登壇。日本側からは、いずれもWCRP日本委の理事である黒住宗道氏(黒住教教主)、金性済(キム・ソンジェ)氏(日本キリスト教協議会〔NCC〕総幹事)、山崎龍明(りゅうみょう)氏(武蔵野大学名誉教授)のほか、庭野統弘(むねひろ)氏(立正佼成会学林学長)と殿平氏が登壇し、山崎氏がコーディネーターのもと、それぞれがコメントした。
この中でヤン氏は、北朝鮮出身者の未返還遺骨について「日韓の宗教者交流を活性化させ、韓国・北朝鮮・日本の宗教者が協同して、北朝鮮の遺骨を里帰りさせる取り組みをしてはどうか」と提案。日本の宗教者らもこれに賛意を示した。
最後には、WCRP日本委前理事長の杉谷義純氏(天台宗・妙法院問跡門主)が、「近くて遠い国とは言いながら、お互い努力を図っていけば、やがて近くて近い国になり得る」とコメント。「さらに宗教者が何を今後取り組むべきか、考えながら進んでいきたい」と述べ、シンポジウムを締めくくった。