ルワンダで教会やモスクなどの宗教施設が相次いで閉鎖されている。ルワンダ統治局(RGB)が今年初め、宗教施設に対する新しい設置要件を定め、要件を満たさない施設を取り締まっているためだ。地元の親政権メディア「KTプレス」(英語)によると、すでに8千余りの宗教施設が閉鎖されており、閉鎖される施設はさらに増えている。
キリスト教迫害監視団体「ワールド・ウォッチ・モニター」(WWM、英語)によると、教会などの宗教施設の閉鎖は、政府の世俗主義化を明確にする措置の一環だとみられている。
WWMによると、ある村では結婚式の会場となっていた教会が式の最中に閉鎖され、新郎新婦と参列者が式の途中で教会から追い出されることがあった。また別の地域では、教区内の教会すべてが閉鎖され、学校の体育館などで礼拝や家庭集会を行っていたが、これらについても中止を命じられた。別の教会では、自教会が閉鎖されため、信徒たちが約20キロも歩いて近隣の教会で礼拝を守っている。
匿名の現地アナリストがWWMに語ったところによると、閉鎖措置は現地で裕福とされる教会に対しても行われており、国内の諸教会が一様に圧力を受けているという。ある地域では当初、ある程度の裁量を認める担当当局者もいたが、それを理由に非難されたことで、より厳しく新要件が適用されるようになったという。
WWMによると、宗教施設に対する新要件は、▽トイレの場所は入り口から一定の距離を置く、▽布製の天井を取り付ける、▽施設へ出入りする道路と施設の敷地は舗装する、▽内壁と天井は塗装する、▽避雷針を取り付ける――など。
また、宗教団体の法人代表や主要な説教者は、宗教に関する学位の取得が必須になる。この要件はこれまでも求められていたが、今後は認定された機関からの学位しか認められなくなる。さらにWWMによると、認定機関は科学技術を教える必要があり、通常の神学校や聖書学校のほとんどが除外されてしまうという。
一方、RGBの責任者を務めるアナスタス・シャカ教授は、閉鎖された教会も実際は活動を続けており、あくまでも信教の自由は保障されていると主張している。しかし、教会指導者の間では恐れが高まっている。英BBC(英語)によると、新しい要件が実施され始めた直後、当局者は政府の命令を無視するよう民衆を先導したとして、牧師6人を逮捕した。6人はその後釈放されたが、逮捕は民衆が抵抗しないようにするための見せしめだった、と地元の牧師は話す。
ルワンダは国民の約9割がキリスト教徒の国だが、憲法の前文からキリスト教関連の文言が削除され、従来はごく当たり前だった政府機関内の祈祷会が現在では認められないなど、世俗主義化が著しく進んでいる。
ルワンダ大虐殺の記念行事ではこれまで、牧師や司祭が主要な役割を担っていたが、現在では虐殺の記念週間であっても、教会が記念行事を主催しない限り、牧師や司祭が大虐殺について話したり、説教したりすることができない。さらに、毎月の日曜日のうち2日は主要道路が閉鎖されるため、教会の出席率の減少を招いている。この他、現与党・ルワンダ愛国戦線(FRP)の会議や活動の多くが、日曜日に義務化される恐れもあるという。
今回の新要件については、文面上はキリスト教だけでなく、イスラム教や他の宗教にも適用される。しかしWWMは、実状は違うと指摘する。イスラム教の聖職者は、拡声器で礼拝者を祈りに招集することを禁ずる決定に抗議する意向を表明しており、今のところ、この慣習は継続して行われているという。
最近の国勢調査(2002年)の情報によると、ルワンダでは、国民の約57パーセントがカトリックで、約26パーセントがプロテスタント、約11パーセントがセブンスデー・アドベンチスト(プロテスタントの一派)と、キリスト教徒が94パーセントを占め、イスラム教(主にスンニ派)は5パーセント弱。