世界教会協議会(WCC)と世界改革派教会共同体(WCRC)の代表団は3日から7日まで、北朝鮮の朝鮮キリスト教連盟(KCF)からの招待を受け、首都・平壌を訪問した。KCFの代表者と面会したほか、北朝鮮の憲法上の国家元首である金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長らと会談。最終日には、先月27日に韓国・北朝鮮の両首脳によって出された「板門店宣言」を、朝鮮半島の和平実現のための大きな前進だとして歓迎する声明(英語)を発表した。
訪問団は、WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事(ノルウェー教会牧師)や、WCRCのクリス・ファーガソン総幹事(カナダ合同教会牧師)ら6人で構成された。両総幹事は、訪朝前にはソウルで韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相とも会談。北朝鮮では金委員長のほか、最高人民会議の代議員である祖国統一研究院の李種革(リ・ジョンヒョク)院長ら、政府の要人と会談した。趙統一相と金委員長は共に、朝鮮半島の平和統一に向けた取り組みにおいて、教会指導者や信仰共同体が果たす役割の重要性を認め、強調したという。
WCCは1984年、日本のYMCA東山荘(静岡県御殿場市)で「東北アジアの正義と平和会議」を開催。朝鮮半島の平和統一が両国間だけでなく、世界の教会の課題であることを確認した(東山荘プロセス)。世界のエキュメニカル運動はそれ以来、30年以上にわたって朝鮮半島の問題に取り組んできた。中でもKCF、韓国キリスト教協会協議会(NCCK)、またWCC、WCRC加盟の韓国諸教会の間で育まれてきた交流は、その中心的な役割を果たしてきた。
代表団は声明で「われわれは今日、KCFとNCCKと共に、『板門店宣言』で表明された事項を歓迎できることを神に感謝する」とコメント。「同宣言は、朝鮮半島の平和のためにエキュメニカル運動が長らく期待し、熱望してきたことが含まれており、特に軍事的緊張の緩和に向けた共同の努力、南北間の交流・協力の促進、1953年の休戦協定の平和協定への転換を含むもので、『朝鮮半島にもはや戦争がない』という厳粛な宣言であった」と評価した。
WCCは、核兵器だけでなく、原子力発電における核の使用も中止する「核のない世界」を目指しており、同宣言が「完全な非核化を通しての核のない朝鮮半島」の実現に言及したことも評価した。
WCCのトヴェイト総幹事は「われわれは、自然の世界だけでなく、朝鮮半島の両国民、両政府の関係においても、美しく新しい春といえる季節に平壌を訪れました」とコメント。また「われわれは、この春という季節が、良い収穫を得るために種をまき働く時期であることも知っています」と述べ、朝鮮半島の和平に向け、今後もさらに取り組みを継続していく意向を示した。
WCRCのファーガソン総幹事も「WCCとWCRCは共に、朝鮮半島、また東北アジアの人々のために、非常に長い間求め、願ってきた和平に向けた新しい前進を支援するため、世界中の加盟教会に働き掛けるよう求められている」と述べ、継続した支援の必要性を強調した。
訪問団は声明の最後で、「平和をつくる者として主イエス・キリストに呼ばれた、すべての教会とすべてのキリスト者、また世界中の善意あるすべての人々に対し、『板門店宣言』で表明された韓国・北朝鮮主導の平和に向けた取り組みを支援するよう呼び掛けます」と求め、同宣言は韓国・北朝鮮両国だけでなく、東北アジアや世界にとっても「持続可能な平和を実現するための基礎であり枠組」だと強調した。