在日ユダヤ人伝道団体「エターナル・ラブ・イスラエル」(宮本純子代表)の決起集会が1日、アットビジネスセンター池袋駅前別館(東京都豊島区)で開催された。集会では、来日したイスラエル・メシアニック・ジュー連合議長のハナン・ルカス氏が、「預言的視点から見た主の例祭」と題してメッセージを伝えた。
エターナル・ラブ・イスラエルは、元イスラエル宣教師の宮本さんが1993年に設立した。宮本さんは17歳でユダヤ人伝道への召命を受け、当時24歳で同団体を設立。その頃は露天商としてユダヤ人が日本を訪れることが多く、ヘブライ語のトラクトや聖書を配布し、日本国内だけで約3千人のユダヤ人に福音を伝えてきた。結婚を機に10年間活動を休止していたが、昨年から再開。決起集会には、初期の頃からエターナル・ラブ・イスラエルの働きを支えている人や、ユダヤ人伝道に関心のある約50人が参加した。
この日は、イエス・キリストの復活を記念するキリスト教の祭典「イースター(復活祭)」だったが、今年はちょうどユダヤ教の三大祭りの1つである「過越の祭り」と重なった。過越の祭りは、奴隷生活を送っていたイスラエルの民がエジプトから脱出した出来事を記念する行事で、今年は3月31日から4月6日まで。ルカス氏は講演の他、この期間に食べる「セデル」と呼ばれる食事の解説も行った。
集会の初めには、宮本さんが10年ぶりに活動を再開した経緯を説明した。宮本氏は20歳の時に初めて訪問して以来、イスラエルを20回も訪れている。長い時は半年間余りも滞在し、エルサレム旧市街にある聖公会系のクライストチャーチで奉仕するなどした。しかし、日本を訪れるユダヤ人露天商が少なくなったこともあり、2005年頃から行き詰まりを感じ、精神的にも追い詰められてしまった。そして、07年5月にイスラエルを訪問したのを最後に同年7月に結婚し、引退した。14年間続けてきたユダヤ人伝道のすべてを「心の中の大きな箱にしまい、鍵をかけました。そしてその鍵を神様にお渡ししました」と当時を振り返る。
しかし3年前、ある出来事が起こった。実家で一人暮らしをしていた父親が自殺したのだ。「変わり果てた父親の遺体を何時間も見つめていました」。宮本さんは18歳の時、殺人事件で母親を亡くしており、その時と同じように心の底から泣いて神に祈ったという。遺品を整理する中で、父親がエターナル・ラブ・イスラエルの資料の多くを保存していたことを知った。その時はまだ、資料が入った箱さえも空けられない状態で、一部を残してほとんど処分した。
それから半年後、今度は自宅を訪れた友人に、かつてイスラエル宣教師であったことなどを話す機会があった。宮本さんの話を聞いたその友人は自らもイスラエルを訪れ、宮本さんと聖書の学びも始めるようになった。その友人を通して人も集まるようになり、17年1月には家の教会として「シャローム教会」を始めることに。そして、祈りの中で「起きなさい。目覚める時が来たのです」との言葉が与えられ、同年8月からエターナル・ラブ・イスラエルの活動を再開した。
宮本さんの証しに続いて、ルカス氏が講演した。ルカス氏は、イスラエルが建国された1948年に生まれた。ポーランドに住んでいた両親はホロコーストの生き残りで、イタリアなどでの難民生活を経て、建国されたばかりのイスラエルに移住。その年に生まれたのがルカス氏だった。徴兵制のあるイスラエルで3年間兵役し、実際に戦争も経験した。イエス・キリストを信じたのは28歳の時。外国人のクリスチャンとの出会いを通して信仰を持つようになった。ユダヤ人として他の民族から憎まれていると感じていたが、その人はユダヤ人であるルカス氏を愛してくれたという。理由を聞くと「イスラエルの神を愛しているから。イエス様はユダヤ人。だから私もユダヤ人を愛するのです」と言われた。「それで心が捉えられました。ユダヤ人を伝道する最良の方法は、ユダヤ人を愛することです」と伝えた。
ルカス氏はこの日、レビ記23章に書かれている例祭(決められた時期に行う祭り)について説明した。ルカス氏によると、23章には、▽安息日、▽過越の祭り(種なしパンの祭り)、▽初穂の祭り、▽七週の祭り、▽ラッパの祭り、▽贖罪の日、▽仮庵の祭りの7つの例祭が記されている。
初穂の祭りは7日間にわたる過越の祭りの間に行われる。この期間には羊を屠(ほふ)るが、「それは世の罪を取り除く神の子羊、イエスを表している。ユダヤ人だけではなく、すべての国民のための贖(あがな)い」だとルカス氏。現在、キリスト教で祝われているイースターの原型であり、預言的な成就でもあると説明した。また七週の祭りは、イスラエルは農業祭として祝われているが、キリスト教ではペンテコステに相当すると指摘。約3500年前に記されたレビ記の記述を預言的視点で見るとき、すでに幾つかが成就していると語った。
講演後、ルカス氏はセデルで食する象徴的な意味のある食品1つ1つを紹介。エジプトでの苦い奴隷生活を象徴する苦菜「マロール」や、イースト菌で発酵させていないパン(種なしパン)の「マッツァ」など、実物を見せながら解説した。最後には、参加者全員でヘブライ語の賛美を歌い、ルカス氏が民数記6章24〜26節にあるアロンの祝祷をささげ、会は閉じた。