フィリピン・ミンダナオ島南部の都市マラウィの聖マリア大聖堂では今年、長い歴史の中で初めて、聖週間(受難週)の諸集会が行われなかった。また、復活の主日(復活祭)のミサも行われない。昨年の政府軍と過激派組織「イスラム国」(IS)系の武装勢力による激しい戦闘により、大聖堂が激しく破損したからだ。
フィリピンの有力日刊紙「インクワイアラー」(英語)によると、マラウィ司教エドウィン・デラペナは聖週間が始まる前日の24日、「長い年月で初めて、当大聖堂では(聖週間の)いかなる集会も行われません。しかし、聖職者のいる他の小教区(教会)では聖週間の諸集会が行われます」と述べた。米ニュースサイト「PJメディア」(英語)によると、同大聖堂では、聖週間に行われる「枝の主日」(棕櫚〔しゅろ〕の主日)、「聖木曜日」(洗足木曜日)、「聖金曜日」の諸集会に加え、復活の主日のミサも行われない。
マラウィの戦闘は昨年5月に始まった。何百人もの戦闘員が、イスラム教が支配的な同市内の商店やモスク、民家を掌握し、約200人が人質に取られた。その多くはキリスト教徒だった。その後、ミンダナオ島全体に戒厳令が敷かれ、米国政府は対テロ活動のためにフィリピンを支援した。
数十人のキリスト教徒の民間人が殺害され、他の住民は昨年5月から10月までの約半年間、戦闘の戦火にさらされた。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、「武装勢力は常態的に民間人を標的にし、数多くの違法な処刑を行った。民間人犠牲者のほとんどは、イスラム教徒ではないという理由で標的にされたキリスト教徒だった」という。
IS系の戦闘員らは戦闘が始まった初期の時点で、聖マリア大聖堂を占拠し、内部を破壊する様子を動画で公開するなどしていた。昨年8月に政府軍が奪取し、銃弾で穴だらけになった大聖堂で、軍関係者が参加しての特別なミサが行われた。カトリック系メディア「アジア・ニュース」(英語)によると、デラペナ司教は今年1月に入ってやっと大聖堂内に入ることができたという。
インクワイアラーによると、聖週間の諸集会は同大聖堂では行われなかったが、近隣にある6つの教会では、レデンプトール会やフランシスコ会などの修道会から派遣された司祭や、近隣教区の助祭などの助けを得て行われた。
デラペナ司教によると、マラウィのカトリック人口は約5パーセント。フィリピン全体ではカトリック教徒が多数派を占めているが、マラウィでは少数派になる。
カトリック系の支援団体「エイド・トゥー・ザ・チャーチ・イン・ニード(困窮している教会への支援)」(ACN)のフィリピン支部は、傷ついたマラウィ市民救済のためにキャンペーンを行っている。これは、破壊された町の復興や物質的な支援だけでなく、人々の霊的な治癒も目的にしているという。