第50回韓国国家朝餐祈祷会が8日朝、「歴史を主管する神」をテーマに、首都ソウル近郊の高陽(コヤン)市で開催された。文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正淑(キム・ジョンスク)夫人のほか、国内外の要人や韓国の教会指導者ら、歴代最多となる約5千人が参加した。参加者は、韓国の国としての安全保障や世界平和、経済の発展や国の指導者のために祈りをささげた。
祈祷会は2部構成で行われ、青年らによる賛美を中心とした第1部では、新エデン教会の蘇康錫(ソ・ガンソク)牧師が「反省と和解で統一の道を開け」(詩編85:10〜12、ペトロ一2:11〜14)と題してメッセージを伝えた。
蘇牧師は、旧約聖書に記されている50年に1度の「ヨベルの年」に言及。ユダヤ人社会では、奴隷が解放され、負債が帳消しにされる解放と自由の年だったと説明し、第50回となった今回の祈祷会を「ヨベルの年に見合うようなものにしたい」と語った。
また、朝鮮戦争で兵役に就いていた元軍人らに、長年にわたって奉仕してきた新エデン教会の取り組みを紹介した。蘇牧師はこの取り組みについて「過去の悲惨な歴史を記憶し、再びこの地に戦争が起こらないようにするため」と説明。「北朝鮮が核武装を継続する状況の中、何の対策もせずに『戦争は望まない』と話すことではない。自由民主主義の上に立ちつつ、徹底して韓米同盟の強化と安全保障の対比をしながらも、血を流すことのない福音的平和統一を講じようということだ」と述べた。
一方、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック後には、平和と和解へ向けた雰囲気が生まれつつあると歓迎。「どれほど幸いな知らせだろうか。しかし、われわれはこれで満足してはならない。韓国の教会がさらに平和の花畑を作り、和解の花道を開く役割をしなければならない」と強調した。
また「われわれは、明らかに間違った積弊を直さなければならない。しかし、別の積弊を産み出すことに対しても警戒しなければならない」と指摘。「過去に執着せず、未来志向的に行かなければならない」と述べた。
この他、最近の韓国社会では、教会に対する憎悪を意図的に広める風潮があるとし「(反省すべきことがあれば)当然、教会も反省して悔い改めなければならない。しかし、悪意を持って教会を憎み、意図的に倒すために攻撃することがあってはならない」と訴えた。
また、政府が信教の自由で保護されている教会の領域を侵犯したり、抑圧してはならないと指摘。同性婚を認めない声が多い韓国の教会を念頭に「韓国の教会は同性愛者を差別したり、処罰するよう求めたりはしていない。性的指向を含む差別禁止法の制定や改憲によって、(同性婚を認めない)より多くの人々が逆差別を受けるという矛盾は決してあってはならない」と語った。
蘇牧師のメッセージの後には、文大統領が祝辞を述べ「130年以上前に、この地にキリスト教が伝えられ、韓国は自由と真理への道を歩んできた」と語った。「それは、不当な侵略と支配から真の自由を求め、不平等と抑圧から正義の国を建てる崇高な旅だった。その道で、韓国の教会は確かに大きな力となった。国が危機に直面したとき、消えることのないろうそくとなって公儀を宣言し、実践した。疲れ果てた国民を、いのちと愛を持って抱いてくれた」。文大統領はこのように述べ、キリスト教が韓国の近代化と民主化の原動力になったと強調した。
北朝鮮との関係については「長い反目と対立により、いまだに癒えない傷がわれわれの中にあるのは事実」と指摘。しかし「われわれの運命を他人に任せることはできない。米国をはじめとする国際社会と手を取り合い、北朝鮮との対話で一歩ずつ、朝鮮半島の平和と繁栄のための礎石を置く。それが本当に傷を癒やす道だと信じている」と訴えた。またその上で「(他者を)受け入れ、調和をもたらすイエスの愛を実践する皆さんが、韓国と朝鮮半島の未来のために祈ってほしい。神がわれわれに知恵と勇気をくださるよう祈ってほしい」と求めた。
祈祷会では、在韓米陸軍第8軍のマイケル・ビルズ司令官もあいさつした。ビルズ司令官は、国家レベルで朝餐祈祷会を行っているのは米韓の2国だけだと述べ「今日、この場に韓国と世界のために祈る多くの人々が集まった。私と私の家族も、祈りの力を信じている。神への信仰、そして韓国と米国に祝福を与えられたことに毎日感謝し、祈っている。堅固な韓米同盟は、神が許された自由を守るために非常に重要である。両国がこの祈祷会の伝統を継続し、絆を強化してほしい」と伝えた。
第2部では、韓国国家朝餐祈祷会会長の金振杓(キム・ジンピョ)議員(共に民主党)がスピーチを行った。金議員は、韓国の現憲法を制定した「大韓民国制憲議会」(1948〜50)が、牧師でもあった李允榮(イ・ユンヨウン)議員の祈りで始まったエピソードを紹介。「当時のクリスチャンは、韓国の全人口の1パーセント前後だったが、光復(日本の統治下からの解放)と政府の樹立に中心的な役割を果たした人々がほとんどクリスチャンだったため可能だった」と語った。
そして「その伝統を引き継いだ国家朝餐祈祷会は、過去50年間、1度も休まずに国の指導者たちのために毎年開かれた」と強調。「過去1世紀の間、韓国の教会は世界宣教史上、他に類を見ないほど急速にリバイバルした。また第2次世界大戦後に独立したこの国が、経済成長と民主化を最も早く成し遂げることができたのも、クリスチャンの涙の祈りに神が答えてくださったからだ」などと語った。
その一方で、現在の韓国内外の情勢は厳しいものがあるとして「祈りがこれまで以上に必要」だと訴えた。そして「全世界の各地で1つの声を持って祈るとき、神が必ず答えてくださることを信じる」と伝えた。
最後には、現・昌原(チャンウォン)市長の安商守(アン・サンス)元議員(自由韓国党)が閉会の祈りで「文大統領が神を恐れ、知恵と聡明を得るように助けてください」などと述べ、祈祷会は幕を下ろした。