キリスト教学校教育同盟は、2年に1度改定される教育研究委員会(教研)のテーマについて、2018年度と19年度は「キリスト教学校につながる喜び―多様性の尊重と共生をめざして」とすることに決定した。教育同盟の機関紙「キリスト教学校教育」3月号が報じた。
同機関紙によると、昨年12月の教研全国委員会には22人の委員が出席し、事前に委員から提出されたテーマ案とその解題を基に審議を進めた。委員会に先立ち、教研担当理事と教研委員長が、提出されたテーマ案から同じ傾向を持つキーワードをまとめ、類似キーワード別の集約案を作成。この集約案も参考にしながら、委員全員が、あらためてそれぞれのテーマ案について解説した。
審議の結果、1)クリスチャン、ノンクリスチャンを問わず受け入れやすいテーマであること、2)苦しい状況にあっても喜びを持ってキリスト教学校奉職者が向き合い、引き受けることのできるテーマであること、3)福音を根拠にする多様性と共生に思いをいたすテーマであること――の3つの基本的方向性を確認した上で、テーマをまとめていった。
教研担当常任理事で明治学院学院長の小暮修也氏は、同機関紙掲載のテーマ解題で、「『喜び』という言葉には深い意味がある」とし、ミッションスクールの大阪女学院高校出身で『雨上がりに咲く向日葵のように~「余命半年」宣告の先を生きるということ~』の著者、山下弘子さんの体験談に触れた。
山下さんは19歳の時に突然腹部が痛くなり、精密検査を受けた結果、肝臓を中心にガンが広がっていることが分かり、余命半年の宣告を受けた。山下さんはクリスチャンではないが、どうしようもない苦痛と絶望に襲われたとき、次の聖書の言葉が助けになったという。
「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい」(Ⅰテサロニケ5:16~18)
苦しいときに立ち止まり、まず感謝することを始めてみた。すると、今まで見えてこなかったものが見えてきたという。「まわりのすべてに素直に感謝し清らかな心でいる。すると、苦しみのなかでも喜びがたくさん見つかりました」と、山下さんは著書の中で述べている。
小暮氏は、グローバル経済という名の経済的強者による支配、軍事力による対立、自国中心主義と排外主義の台頭など、現代社会を取り巻くさまざまな問題が「少なからず子どもたちに影響を与えている」と指摘。キリスト教学校が取り組んでいる1)「神の似姿としての人間の尊厳と平等」(創世記1:27)を示す教育、2)「隣人愛」(マタイ22:39)に基づき共に生きる教育、3)互いに平和に生きること(詩編34:15)を求める教育が、現代社会においてますます出番を迎えているのではないかと述べた。
その上で、「これらのことを念頭に置きながら、各研修会や夏期学校がこの教研テーマをさらに深く豊かにして、喜びを共にすることができるよう願っている」と期待を述べた。