キリスト教やユダヤ教、イスラム教の指導者ら400人余りが7日、宗教的少数派や宗教的コミュニティーの周縁化に対する世界的保護を求める「ワシントン宣言」を発表した。
宣言は、米首都ワシントンで2日間にわたって開催された「共通の善のための善行同盟」の会議で出された。この会議は、「イスラム社会平和促進フォーラム」と同フォーラム理事長でサウジアラビア人イスラム研究家のシェイク・アブダラ・ビン・バイア教授が主宰した。ワシントン宣言は次のようにうたっている。
「もしわれわれが外国人を含めた隣人を愛せないなら、われわれは神を愛することも、神に仕えることもできない。相互に共通する価値観は、相互の相違よりも重要である。またわれわれは、共に行動するときに最も強くなれる。われわれは、分裂状態の中で力を合わせ、団結を推し進めることを誓う。また、貧困者を援助し、弱者を助け、心の貧しい人々を癒やし、すべての人間の尊厳を尊重するという判断を支持することを誓う。われわれは深い神学的理解から生まれる確信によって、この取り組みを先導する」
ワシントン宣言は団結や宗教的自由の促進を求めるとともに、4つの行動も呼び掛けている。
1つは、この宣言を実施するための「善行同盟」の設立。そして、世界中の貧困者や恵まれない人々に食糧を供給するため、10億食余りの食事を用意すること。また、「仲介と和解を支援する」著名な宗教的人物らで構成される複合宗教団体の設置。さらに、宣言で掲げられたコミュニティーや世界の多様性を最大限に反映させる」ための異宗教間委員会の創設を求めている。
「信仰にかかわらず、すべての人々は宗教的自由を得る権利がある。宗教を強要する余地はない。それは、いかなる宗教支持者も社会への完全かつ公平な参加から除外される正当な根拠がないことと同じである。この原則は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教において傑出しており、米国とも密接に関連している。米国では、バージニア州信教の自由条例が合衆国憲法の採択に先立って行われた経緯がある」
ワシントン宣言の運営委員会には、米国の元国際宗教自由特使でラビ(ユダヤ教の宗教指導者)のデイビッド・サパースタイン氏、福音派の牧師であるボブ・ロバーツ氏、バージニア州全ダレス地区イスラム協会のイマム(イスラム教の指導者)であるモハメド・マギド氏、元ワシントン大司教のセオドア・マカリク枢機卿、「宗教・伝統的平和の使者ネットワーク」のモハメド・エルサノウシ氏らがいる。
今世界では、宗教を問わず毎年数万人の信仰者が迫害を受けているとされている。
ワシントン宣言は、2016年1月にモロッコ・マラケシュで開かれた国際会議で採択された「マラケシュ宣言」がベース。マラケシュ宣言は、350人余りの宗教指導者が署名しており、特にイスラム主流国の宗教的少数派の保護を求めている。
「宗教指導者たちには、宗教的信条や教義が誤った目的のために歪められることのないようにする特段の責任がある。かえって社会の中で神の愛の生きた模範を示さなければならない」とワシントン宣言は提唱する。
「そのような責任を鑑み、われわれは紛争や戦争につながる分極化を拒否する。われわれは連帯を深め、宗教が和解と調和の力であることを確かなものとする決意をしている。われわれは宗教間の違いを越えて、平和や慈悲、赦(ゆる)しや同情、正義や真実を含めた各宗教の伝統的価値観を支援することを誓う」