昨年12月に伝道を禁止する内容を盛り込んだ新しい刑法が成立していた南米ボリビアで、抗議の声が相次いだことを受け、エボ・モラレス大統領は21日、新刑法を廃止すると発表した。新刑法の下では、伝道した場合、最大で禁錮12年に処せられる可能性があり、特に伝道が活発な福音派からは強い懸念の声が出ていた。
モラレス氏は同日、自身のツイッターに「われわれは混乱を避けるため、(新しい)刑法を廃止することを決定しました。これにより、誤った情報とうそでこの国を不安定する議論や共謀はなくなります」と投稿。「われわれは、刑法に関するあらゆる分野からの提案を聴きます。政府はボリビア国民(の意思)に反するような規則を承認することはありません」と述べた。
新刑法は88条1項で、「武力紛争や宗教団体、礼拝団体に参加する人々を集める目的で、人々を募集したり、輸送したり、自由を奪ったり、接待したりする人は、7年から12年の禁錮刑に処せられる」と定めており、教会に人を誘う行為も該当する恐れがあった。
キリスト教ニュースサイト「エバンジェリカル・フォーカス」(英語)が15日に伝えたところによると、ボリビア福音同盟(ANDEB)や地元の福音派諸団体は、新刑法の成立を受け、全国緊急委員会を設置。諸教会が新刑法にどのように対処すべきかを検討するなどしていた。
同委は新刑法を批判する声明を発表し、「われわれは、この法に反する可能性のある行為のリストの中に、牧会活動が含まれることに対して、最も断固とした拒否を表明します」と主張。「立法者は、ボリビアの福音派キリスト教会がボリビア政府によって認められている宗教団体であり、合法的な組織であることを忘れています」などと述べていた。
21日には、断食と祈りで新刑法に平和的に抗議する集会が複数の広場で開かれ、多くの教会が参加した。
2012年の推計によると、ボリビアは他の多くの南米諸国と同様、カトリック信徒が国民の大半を占めるが、プロテスタントの福音派とペンテコステ派は人口の約8・1パーセント、その他のプロテスタントは約7・9パーセントを占める。