米国で「ボーン・アゲイン(新生)」したクリスチャンが減少し続けている。また、福音を伝える強い個人的な責任があると信じる人も、少数派になりつつあるという。
米国文化信仰研究所(ACFI)は11月28日、「クリスチャンは福音を伝えていない」(英語)と題する調査報告を発表した。調査は今年2月〜10月の間、毎月千人以上を対象に行い、期間中に計9273人の成人(18歳以上)から回答を得た。その結果、ボーン・アゲインしたクリスチャンは全体の31%で、2010年以来続く減少傾向を反映した形となった。
研究員のジョージ・バーナ氏は、この結果から次のように警告する。
「米国のキリスト教はかなりのチャレンジの時を通っています。キリスト教界全体は、ある根本的な変化が実際になされない限り、おそらく将来的に成長しないでしょう」
「最近、伝道を強調し、そのために人々を備えている教会は、さらに少なくなっています。そしてこの結果は明らかで、否定できません。福音を伝える働きを無視する結果は大きく、特に福音を最も受け入れやすい子どもたちの間で甚大です。この世界のすべての『教会成長』戦略は、イエス・キリストが人類のために行ってくれたことである福音を、真実に伝えることの欠如を補うことはできません」
また、ボーン・アゲインしたクリスチャンの割合が多いのは、より年齢の高い世代になっている。30代と40代は31%で平均と同じだが、30歳以下は23%と低く、65歳以上が33%、50歳〜64歳が37%となっている。そのため、このままいけば、ボーン・アゲインしたクリスチャンの減少はさらに進む可能性が高い。
「年齢の高い米国人が亡くなれば、より若い世代の人口の割合が高まり、今後もボーン・アゲインしたクリスチャンの割合が引き下がり続けるでしょう。子どもたちと10代の若者たちもまた、ボーン・アゲインする可能性がより低いことを示しており、さらにこの部分の成長の可能性を制限しています」
一方、ボーン・アゲインを経験しているクリスチャンの3人に2人が、18歳前にイエスを救い主として受け入れていることが分かった。これは、若者たちが高校卒業前にイエスを受け入れる可能性が高いことを示している。
この他、18〜21歳(大学生時代)、22〜29歳、30〜39歳の各年代で新生経験をしたと回答した人はそれぞれ8%(計24%)で、ボーン・アゲインしたクリスチャンの9割近くが、40歳を迎える前にイエスを受け入れたと回答した。
支持政党別では、民主党(27%)と無党派層(26%)に比べて、ボーン・アゲインしたクリスチャンは共和党(45%)を支持する人が多かった。また政治的な立場では、中道(27%)、リベラル(19%)に比べて、保守(51%)が多かった。
バーナ氏は、ボーン・アゲインしたクリスチャンが減少している理由は、主に伝道と救いに対する態度にあると考えている。異なる見解を持つ人と自身の宗教的信条を分かち合う強い個人的な責任があると考えている成人は21%だけで、ボーン・アゲインしたクリスチャンの間でも39%だった。
さらに懸念されるのは、個人的な善や善行によって永遠の救いを得ることができると考える成人(25%)が、善行によって救いは得られないと回答した成人(20%)を上回ったことだ。永遠の救いはキリストの贖(あがな)いにのみ基づくと回答したのは、プロテスタントでは55%、カトリックでは19%だけだった。
一方、ボーン・アゲインしたクリスチャンの間で過去20年間に見られる顕著な変化に、自分自身を単にクリスチャンだとし、プロテスタントやカトリックに分類されることを認めないことがある。今年の調査では38%がそのような回答をしており、このようなことは「四半世紀前には聞かれなかった」ことだという。
「これは、全米において1つの基準となっている『プロテスタント』というアイデンティティーに挑戦するものです。この変化は、社会制度に対する忠誠心の低下や、個人の価値観や関係性に伝統的なラベルを使わなくなっていることと一致しています」
イエス・キリストに従う決断をした理由においては、ボーン・アゲインしたクリスチャンの29%が両親の影響を挙げた。また20%は教会行事から、16%は家族や親戚から影響を受けたと回答した。バーナ氏はこうした数字から、両親が子どもたちにキリスト教信仰の魅力を伝えることに失敗していると警告している。
ボーン・アゲイン(born again、新生):自覚的に罪を認め、イエス・キリストを救い主として受け入れ、聖霊によって新たに生まれる(霊的なバプテスマ〔洗礼〕を受ける)こと。ACFIの調査では、自認しているかではなく、罪と救いに対する神学的見解から、ボーン・アゲインしたクリスチャンかどうかを判断している。