過激派組織「イスラム国」(IS)が、ローマでのテロを予告する動画を公開した。動画には、ISの戦闘員らがキリスト像を踏み付けたり、ローマ教皇の写真を破るシーンなどが映っている。英カトリック・ヘラルド誌(英語)などが25日に伝えた。
動画の主要な部分は、ISに忠誠を誓う武装勢力が戦闘を続けるフィリピン南部ミンダナオ島のマラウイで撮影されたとみられる。動画には、ISの戦闘員らが、教会を荒らし回って装飾品を破壊し、放火する様子などが映っている。
また、ISの戦闘員が、前教皇ベネディクト16世と現教皇フランシスコの写真を破り捨てる場面もあり、「カーフィル(非イスラム教徒を侮蔑する言葉)たちよ、覚えておけ。われわれは次はローマに行く、次はローマだ。アッラーの思し召しのままに」と述べている。さらに、キリスト教を敵視し、「彼らがあらゆる努力をしても、それは滅びる十字架の宗教となるだろう」などとも述べている。
動画は7分弱のもので、2015年にエジプト人キリスト教徒21人の斬首動画などを公開したIS系列の「アルハヤット・メディア・センター」が公開した。英デイリー・エクスプレス紙(英語)によると、教皇の写真を破り捨てたISの戦闘員は、アブ・ジンダルと名乗る男で、米国風のアクセントの英語を話しているという。
一方、バチカンの警護に当たるスイス衛兵のクリストフ・グラフ司令官は、この動画の公開に先立ち、「ローマをターゲットにするような攻撃が起こるのは、おそらく時間の問題でしかない。しかし、われわれも、それに対する準備は十分にできている」と話している。
ISはこれまでも、教皇やバチカンをテロのターゲットにした宣伝活動を行っている。米ニューズウィーク誌(英語)によると、ISの機関紙「ダビク」(現在は発行中止)にはかつて、表紙にバチカンのサンピエトロ広場の写真を載せ、「失敗した十字軍」などの見出しを付けるなどしていた。
また、昨年4月には、バチカンとローマにあるイスラエル大使館を狙ったテロ未遂事件が発生している。この事件では4人が逮捕されており、そのうち1人は、スマートフォン用のメッセージアプリを使って、シリアのIS戦闘員から指令を受けていたという。