ルーテルアワー「心に光を」のラジオ牧師として知られる正木茂(まさき・しげる)氏が13日午後8時53分、家族に見守られる中、自宅で召天した。先月25日に90歳の誕生日を迎えたばかり。前夜式は17日(木)午後7時、告別式は18日(金)午前10時半から神戸ルーテル聖書学院チャペルで行われる。喪主は妻の政恵さん。
正木氏は1927年、兵庫県加古川市に生まれた。戦時下にある44年、17歳の時、家庭集会に誘われ、重い皮膚病を患っていた軍司令官ナアマン(列王記下5章)の話を聞き、その日にキリストを受け入れ回心した。20歳の時、日本イエス・キリスト教団(当時は日本基督教団)高砂相生教会(現在の単立尾上聖愛教会)で洗礼を受け、翌48年、神戸大学医学部を中退して献身し、関西学院大学神学部、神戸ルーテル聖書学院で学んだ後、51年から西日本福音ルーテル教会の松江教会(島根県)、西須磨教会(兵庫県)の牧師を歴任した。57~60年、神戸ルーテル神学校で学んだ後、津山教会(岡山県)に赴任。また、ラジオ関西や山陰放送などで放送されている「ルーテルアワー」のラジオ伝道には52年から従事し、「心に光を」の初代ラジオ牧師を68年から20年間務めた。その間、北大阪教会(68年)や太子教会(80年、兵庫県)を開拓。さらに、大衆伝道者として各地を巡り、神戸ルーテル聖書学院で教鞭をとった。
87年、60歳で米国に移住し、以後15年間、米国福音放送(BCA)を創設するとともに、在米日本人伝道に尽くし、日本人教会を設立した。2002年に帰国後も、郷里加古川にコイノニヤ・オイコス「憩いの家」を開設して家庭集会を開き、ハワイのラジオ番組「心に光を」で毎週月曜日メッセージを語り続け、各地の伝道集会にも招かれた。著書も多く、聖書日課『この日この朝』『福音に生かされて』(一粒社)、『クリスチャンライフQ&A』(ニューライフ出版)、『十戒と主の祈り』(聖文舎)などがある。84年に留学して神学博士課程を修了した米国コンコーディア神学校大学院から2009年、名誉学位神学博士号が授与された。
長男は神戸ルーテル神学校校長で西日本福音ルーテル教会伊丹福音ルーテル教会牧師である牧人氏、次男は米国コンコーディア神学校教授の直道氏。牧人氏はフェイスブック上で次のように述べている。
「忙しいはずなのに、誰をも受け⼊れ、もてなし、よい助⾔を与え、共に祈り、⼈がイエス・キリストを救い主として、主として⽣きることを励まし喜んでくれました。私たち⼦どもにとっても、最も尊敬し、慕わしい⽗親、牧師、伝道者です。その終わりの瞬間まで、このように⽣きたい、このように召されたい、と思う⽣涯でした」
同じ橋本巽牧師に信仰を導かれ、正木氏とは弟弟子にあたる赤江弘之氏(日本同盟基督教団西大寺キリスト教会牧師)はこう語る。
「正木先生が医学部を中退して伝道者の道に献身した時、橋本師はご家族の反対に際し、『息子さんは今に大いなる働きをする』と言われ、ご自分をバプテスマのヨハネにたとえ、『自分は、息子さんの履物のひもを解く値打ちもない』と表現したそうです」