聖公会トップのカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは7月30日、イスラム教徒が多数派を占めるスーダンで、新しい「管区」の誕生を宣言した。管区は、カトリックや聖公会で用いられる教会の行政単位で、複数の教区で構成される。聖公会の場合、多くは日本聖公会(日本管区)のように国家単位の組織となっている。南部が南スーダンとして独立してから6年で、スーダン聖公会が世界で39番目の管区として認められることになった。
新管区を宣言する式典は日曜日の30日、首都ハルツームの諸聖徒大聖堂で行われた。ウェルビー大主教は、厳しい迫害にさらされているスーダンのキリスト教徒にとって「新しい始まり」だと述べ、新管区の誕生をたたえた。
スーダンはかつて、北部はイスラム教、南部はキリスト教や伝統宗教を信じる人が多く、地域によって宗教的な偏りがあった。長引く内戦で200万人以上の死者を出し、2011年に南部が南スーダンとして分離独立。以来、スーダン聖公会は、キリスト教徒が多い南スーダン側が中心となって運営されていた。
しかし今回、新しく管区として認められたことで、スーダン聖公会は自治権を持つようになり、30日の式典では、エゼキエル・コンドー・クミール・クク主教がスーダン聖公会初の大主教に任命され、また管区を監督する首座主教の立場に就いた。式典には、欧米やアフリカ各国の外交官らも出席し、歓声を上げる数百人の出席者らと共にクク首座主教を歓迎した。
「大きな喜びをもって新しい首座主教を歓迎します」。ウェルビー大主教はそう述べ、「この管区を生かすのは、この地のキリスト教徒たちの責任です。そしてこの管区を支え、そのために祈り、愛することはスーダンの外にいるキリスト教徒たちの責任なのです」と語った。
また、「教会は、財政的に健全であり、国民の技能を育て、そしてここに住むキリスト教徒たちがすでにしているように、この国を祝福することを学ばなければなりません」と続けた。
英BBCの取材には、「カトリック、ルーテル派、他の教派ばかりでなく、聖公会の成長の中心も、アフリカ、アジア、東南アジアです」と述べ、アフリカで誕生した新管区の重要性を語った。
しかし、教勢は伸びているものの、イスラム教徒が多数派を占めるスーダンでは、多くのキリスト教徒が迫害に苦しんでいる。ウェルビー大主教はこの日、オマル・アル・バシール大統領と会談し、この問題を「強く」提起したという。
AFP通信に対しては、「英国では、イスラム教徒が圧力を受けるとき、英国国教会(聖公会)は彼らを保護します」と述べ、スーダンでは逆に少数派のキリスト教徒が保護されることに期待を示した。
改革派のスーダン・キリストの教会(SCOC)が最近発表した書簡には、現地のキリスト教指導者たちが近年直面している「苦しい状況」がつづられている。スーダンでは、教会の取り壊しや財産の没収などが行われ、新しい教会を建設しようとしても、政府が土地を割り当てず、さらに上位の役職者には渡航制限が出されるなどしているという。
カトリック、コプト正教会、スーダン福音長老派教会、ペンテコステ派など幅広い教派に対して圧力があり、これまでに教会関係の建物数十棟が破壊され、さらにこれから解体が計画されている建物もある。スーダン政府は、教会がこれらの土地を指定された目的に反して使用していると主張し、強硬な対応を取っている。
しかし、草の根レベルでは、キリスト教とイスラム教の指導者が平和のために協力する動きもあるという。ウェルビー大主教は、そうした姿に感銘を受けたとし、「これは非常に励ましになる」(BBC)と語った。