世界最大級の教会学校、メトロ・ワールド・チャイルド(旧メトロ・ミニストリーズ)の創設者で主任牧師のビル・ウィルソン氏の講演会「ビル・ウィルソン・セミナー2017」が20日、東京都中央区の日本橋公会堂で開催された。日本ツアー最初の集いとなったこの日は、2回講演が行われ、集まった約250人はウィルソン氏の力強いメッセージに耳を傾けた。
ウィルソン氏は12歳の時、離婚して貧しさに耐えかねた母親から路上に置き去りにされた経験を持つ。3日間同じ場所で母親を待ち続けた彼に声を掛けてくれたのは、1人のクリスチャン男性だった。その男性が教会学校のキャンプにお金を出して参加させてくれたことで、ウィルソン氏はイエス・キリストに出会い、人生を神様にささげる決心をしたのだ。そして、自分と同じような境遇にいる子どもたちのためにスラム街で教会学校を開始。その命懸けの活動は世界的な反響を呼び、アジア、東欧、アフリカ、インド、中南米へと急速に拡大を続け、毎週、各地で開催される教会学校には17万人以上の子どもが集う世界最大の教会学校に成長している。その働きは著書『この子だれの子―ニューヨーク・スラム街からのメッセージ』『逆境に働く信仰』(いのちのことば社)などに詳しい。
今回の日本ツアーのテーマは「暗闇に光を照らせ」。1回目の講演でウィルソン氏は、「闇を嘆く暇があったら、光をともそう」と呼び掛けた。そして、「イエス・キリストの福音によってインパクトを与えなければいけない場所がたくさん残っている。聖霊によって心の目が開かれ、世界がどうなっているかを見、心に灯がともり、闇の者から変えられることができるように」とセミナーの参加者のために祈った。
「もし12歳の時にクリスチャンの男性が教会のキャンプに送ってくれなかったら、私の人生はどうなっていただろうか。あの男性でなく、違う人に拾われ、イエス様に出会っていなければ、今20万人近くの子どもたちも救われていなかった。ごく普通の人であっても、世界を変えられることを知ってほしい。イエス様によって与えられた力が、どれほど強いものか理解してほしい」
そして、「皆さんが住んでいる安全できれいな世界と、私が普段生きている世界とはまるで違う。そこで、あなたを私の生きている世界に導き入れたい」と述べ、ウィルソン氏が撮影した子どもたちの写真をスクリーンに映し出した。そこには、フィリピンのごみ捨て場に暮らすエイズの女の子、空腹のあまり1切れのパンを盗んで捕まり、見せしめのために殺された少年、奇形で生まれたため親に捨てられた男の子、麻薬の注射器を口にくわえさせられている子どもらの姿があった。
そうした劣悪な場所に同伴してくれる医師がなかなかいないため、ウィルソン氏は自ら医療関係の資格にチャレンジした。しかし、「やはり、子どもたちが生きるために最も必要なことは、医療の技術ではない。イエスとの出会いこそ、愛を知り、生きる希望をもたらす」と気付いたという。
また、BBC放送のインタビューで、「イエス・キリストは他の宗教的指導者と何がどう違うのか」という質問を受けたウィルソン氏は、その答えを3つ、聖書のエピソードを通して話した。
まずイエスは、世の中から捨てられたすべての人を抱きしめてくれること。引用したのは、イエスが重い皮膚病を患っている人を「深く憐れんで、手を差し伸べてその人に触れ」て受け入れた箇所だ(マルコ1:40~42)。「イエス様の清さが、汚れたものを清くする。汚れさえ清くすることができるイエス様は、他の宗教的指導者とはまるで違う。イエス様は、社会から見捨てられ、誰も触れようとしなかった人でさえも躊躇(ちゅうちょ)なく抱きしめてくれる」
そしてウィルソン氏は、自身の体験によっても、社会から捨てられた人々をイエスが抱きしめる感覚が分かると言う。「現代にも、世の中から捨てられてしまった多くの人がいる。その人たちのもとにイエス様を届けたい。イエス様だけが希望だから」
次にイエスは、目の前にいる子どもたちを抱きしめてくれること。他の宗教的指導者は子どもたちへの関心が薄いが、イエスは「子どもたちを抱き上げ、手を置いて祝福された」(マルコ10:16)と述べ、子どもに対するイエスの優しさを明かした。
ドミニカ共和国で出会った、奇形を持って生まれた男の子の写真を見ながらウィルソン氏は、「これは道端に捨てられた自分だ」と言う。「この子と同じように抱きしめてもらいたいのに、誰も抱きしめてくれなかった。でも、私はイエス様に出会い、初めて愛されているという感覚、抱きしめてもらっているという感覚を持てた」
3つ目は、イエスは十字架さえも抱きしめること(マルコ15章)。「十字架刑は、世の中で本当にひどい罰を受ける人だけに用意されたもの。でもイエス様は、すべての人類のために自分の命を犠牲にしてこの十字架刑を受け入れてくれた。イエスの十字架の真理こそ、この世に存在する究極の真理。私を自由にする救い主が、私の真理だ」
ウィルソン氏は、麻薬の売人に支配されていた場所に教会学校を開いたことですべてが変わったと語る。「教会学校を始めれば、イエス様が子どもたちの命を守ってくれる。事実、教会学校を開いた翌週、1万人の子どもが集まり、麻薬の売人たちは立ち入れなくなってしまった。麻薬が子どもたちの人生を左右するのではなく、イエス様が彼らを守ってくれる」と力を込めた。
「イエス様は、世の中から捨てられた人や子ども、全人類を救うための十字架さえも抱きしめてくれた。それができたイエス様は、ブッダやモハメッドなど他の宗教的リーダーと明らかに違う。すべての名にまさる名を持っておられる方、イエス。たとえ絶望しかけていたとしても、イエス様によって新しい命が与えられる。だからこそ、私の息が続く限り、世の中から見捨てられた人たちをイエス様のところに連れて行く」
講演会の中では、メトロが最も力を入れている里親支援プログラムへの協力も呼び掛けた。このプログラムは、教会学校に通う子どものスポンサーになることで1対1の関係を築き、子どもに愛と希望を届けられるメトロ独自のプログラムだ。「私も12歳の時に、1人のクリスチャン男性に助けられたことでイエス様に出会い、人生が変わった。あなたも実際に不幸な子どもと出会うことで、彼らの人生を変えることができることを知ってほしい」
セミナーに参加した国分寺市の教会に通う女性は、「パワフルなメッセージを聞くことができてよかった。ビル先生のモチベーションに燃やされ、心が熱くなった」と感想を語った。また、このセミナーを通して、24時間のフルタイムの献身を決意する多くの人々が起こされた。
ウィルソン氏のセミナーは、28、29、30日には沖縄で開催される。詳細は、ブログまたはフェイスブックで。申し込み・問い合わせはメトロ・ワールド・チャイルド日本事務所(電話:03・3561・0174、メール:[email protected])まで。