イスラム過激派の暴力に苦しむエジプトのキリスト教徒たちだが、「目には目を」と報復することはせず、ラマダン(断食月)の時期には、日中食事をできないイスラム教徒のために毎日食事を提供する人たちもいる。
ロイター通信(英語)によると、ラマダンの時期、エジプトではこのような光景が毎年見られるという。しかし今年は、例年よりも反響が大きかった。過激派組織「イスラム国」(IS)が、エジプトのキリスト教徒や教会を狙ったテロ攻撃を相次いで行い、宗教間の亀裂が深まっていたからだ。
キリスト教徒の中年男性、ダウード・リヤドさんは、首都カイロの自宅近くの通りに幾つかのテーブルを置き、通行人に無料で家庭料理を振る舞った。それは、イスラム教徒がラマダン中の日没後に行う「イフタール」という食事の時間帯だった。
「彼らが私と子どもたちを招待してくれたので、私は驚きました。彼らは通り沿いにテーブルを置き、シェイク(アラブの村や家族のリーダー)やキリスト教徒、イスラム教徒の区別をせず、誰でもテーブルに連れて行って断食明けの食事を振る舞ってくれました」と、イスラム教徒のタレク・アリさんは言う。
リヤドさんが住む地区にはキリスト教徒の家庭が幾つかあり、異なる宗教の人々の結束を図る取り組みとして、ラマダンの間、毎日協力して食べ物や飲み物を振る舞っている。
「私たちはみな同じ町内に住んでおり、誰もが兄弟であり友人です。私はこの男性の息子を(私の息子と一緒に)育てたのですが、この男性はイスラム教徒です」と、隣人の男性を指さしてリヤドさんは話した。
ラマダンの期間はイスラム暦(大陰暦)に基づくため、毎年11日ほど早まり、約33年で一巡する。今年は5月26日に始まり、6月24日に終了した。