【CJC=東京】ヨルダン川近くで発見された紀元前1世紀のものとされる石碑に「メシアの3日目の復活」についての文言が記されていると、ヘブライ大学のイスラエル・クノール教授(聖書学)が米『ジャーナル・オブ・レリジョン』誌4月号で主張した。
キリスト教とユダヤ教の関係が再定義される可能性も出てきたことから、死海文書が発見されて60周年を記念してこのほどエルサレムのイスラエル博物館で開かれた会議でも議論が交わされた。
高さ約90センチの石碑には、へブル語の文書87行以上が2段にわたりインクで記載されている。その大半は風化し消えかかっている。80行目には「3日間」という言葉と「生きる」という動詞の一部が見えることから、「メシアの死から3日後に大天使ガブリエルがつかわされ、メシアをよみがえらせた」と教授は解釈している。石碑の文字が彫り込まれたものがほとんどの中で、インクで記された例は非常に珍しい。
十字架に付けられたイエス・キリストが3日後に死者の中からよみがえった、と使徒信条は言明する。メシアの死者の中からの復活がユダヤ思想の中で知られていたとしても、「3日」という数字がイエスの誕生前に予知されていたことを裏付ける発見と言える。
米カリフォルニア州立大学バークレー校のダニエル・ボヤリン教授(タルムード文化学)は、イエスは当時のユダヤ教の伝承を綿密に読むことによって理解される、として「キリスト者の中には、キリスト教神学の独自性が脅かされると衝撃を受ける人も出て来る」と言う。
古代言語の専門家、アダ・ヤルデニ氏は、消えかかった文字が「生きる」と読めないことはないとしつつも、クノール教授の説は受け入れられないと言う。ただテルアビブ大学のユヴァル・ゴレン考古学部長は、死海文書の文字には細工の跡が認められないとしている。
これまで知られている死海文書は羊皮紙などに記されていた所から、今回の発見を「石の死海文書」と呼ぶ向きもある。石碑は10年も前に発見され、ヨルダンの古物商からスイスの収集家が買い取り、チューリッヒの自宅に保管していたものという。
死海文書も発見以来、その所有、保管、研究などをめぐって学者間にも対立があり、内容自体の研究が十分に進んでいるとは言えない状況の中で、「石の死海文書」をめぐっても様々な思惑が交錯しそうだ。