カナダ・バンクーバーで今週末に伝道集会を開催する米国の大衆伝道者、フランクリン・グラハム氏をめぐって、地元のキリスト教指導者の間で賛否が分かれている。集会に反対する聖職者らはバンクーバー市長らと面会するなどしており、スピーカーをグラハム氏から変更するよう要望しているが、集会は予定通り開催される見通しだという。
バンクーバーのグレゴール・ロバートソン市長は、イスラム教徒や同性愛者らに対するグラハム氏の発言に懸念を抱いており、同じ懸念を抱くカトリック、福音派、他の主流派プロテスタントの指導者らと2月10日に面会した。
グラハム氏は最近、イエスが時折発した口調の厳しい言葉を取り上げ、自身の批判的な言葉遣いを弁明。「時々、イエスはあまり愛情に満ちていませんでした。イエスはファリサイ派の人々をマムシ、ヘビ、白く塗った墓と呼びました」と言って、トランスジェンダーの人々を「変人たち」と呼ぶことを正当化していた。
グラハム氏の伝道集会「希望の祭典」は、3月3~5日にバンクーバーのロジャーズ・アリーナで開催され、約2万5千人の参加者を見込んでいる。
ノーム・ファンク氏、ウェイン・ロー氏、サンドロ・ディサバティノ氏、ダニエル・チャン氏、デイビッド・クープ氏、シェリル・クープ氏、ダーリン・レイサム氏、ヤニ・リム氏といった福音派の牧師たちは、グラハム氏の集会を支持している。
一方、別の人々は、グラハム氏の対立を生む言葉遣いに対して懸念を示しており、ロバートソン市長や市当局者らと面会するなどしている。
バンクーバーのティム・スティーブンソン市議は、「市長は安全について心配しています。グラハム氏がイスラム教徒や同性愛者について発している声明は、実際に状況を悪化させかねません」と言う。聖職者らと市長の面会を取り持ったスティーブンソン市議は、カナダ合同教会によって公に按手(あんしゅ)を受けた最初の同性愛の牧師でもある。
市長らとの面会には、カトリック教会のバンクーバー大司教マイケル・ミラーや、リージェント大学のポール・スピルズベリー学部長、バンクーバー神学校のリチャード・タッピング校長、福音派団体「シティーゲート・リーダーシップ・フォーラム」のジョナサン・バード会長、クライストチャーチ大聖堂(聖公会)のピーター・エリコット首席司祭ら14人が出席した。
他の出席者らは名前を公表していないが、バンクーバーの聖職者らの間では、集会のスピーカーをグラハム氏から変更するよう主催者側に求める嘆願書が回っているという。
嘆願書には、「グラハム氏が最近、公にしたコメントは、全ての人のためのイエスの正義と愛の使命を損なうものです」と記されており、「例えば、グラハム氏はイスラム教が西洋キリスト教社会と戦争状態にある『非常に悪く、邪悪な宗教』であるため、全てのイスラム教徒が米国への入国を禁じられるべきだと語りました。グラハム氏は同性愛者が教会に入ること、クリスチャンホームの客となることさえ許されないと呼び掛けて、LGBTQ(性的少数者)のコミュニティーに対して非人間的な扱いをしました」などと書かれている。
カナダの日刊紙「グローブ・アンド・メール」(英語)によると、ロバートソン市長やスティーブンソン市議、また他の市関係者は2月22日、市役所で集会の主催者側と面会。グラハム氏に対する懸念を伝えた上で、スピーカーの変更を要請したが、集会は予定通り開催される見通しだという。